活動報告:自主・連携事業
とうほくNPOフォーラム in 気仙沼 2018 ~ 復興の先を見据えて《今、地域のあり方を考える》~(2018年12月21日)
■日程:2018年12月21日(金)
■場所:気仙沼市民会館(宮城県気仙沼市)
■後援:復興庁、気仙沼市、宮城県、岩手県、福島県
■主催:NPOサポートリンク・フォーラム in 気仙沼2018実行委員会
■参加者:108名
開催趣旨
全国各地でもさまざまな災害が発生し、各地で甚大な被害が発生している。全国各地で復興への取り組みが進められるが、その状況は地域ごとに大きく異なる。東日本大震災で被害を受けた地域も同様で、災害発生から8年を間近に控え、東日本大震災の復興についても、地域課題の変化に伴い、取り組みが多様化している。その変化を適切に捉え、状況にあった活動を進めることが市民活動団体に求められる。
長引く復興過程において、元気に活動を続けて行くために、今一度、原点に立ち戻ることにより、これからの復興のあり方、活動のあり方について考える機会として、フォーラムを実施する。
実施概要
岩手県、宮城県、福島県を中心にNPO、行政関係者など107名が参加しました。オープニングでは、元宮城県知事の浅野史郎さんが「地域の持続可能性」について基調講演を行いました。地域おこしは行政が主役ではなく、住民が主役で進めるべきであり、住民と立ち位置の近い地域の団体(NPO、商工会、地元金融機関など)も住民と一緒に主役となれる存在だといいます。その中でも大事なのは「若者・馬鹿者・余所者・女性」であり、彼らを排除せずに大事にしてほしいと語りました。また、持続可能な地域の目標は「新しいふるさとづくり」であり、そのためにもその地域における「とっておきのもの(Something Special)」探しをすべきだと浅野さんはいいます。その後、NPOの「価値」「担い手」「知恵」「地域でのつながり」という4つのテーマごとに、以下の分科会で学びを深めました。
分科会A:「地域におけるNPOの価値を再点検!」
登壇者
- 小柴徳明さん(社会福祉法人 黒部市社会福祉協議会 経営戦略係長/特定非営利活動法人 明日育 理事)
- 萩原なつ子(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 代表理事/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科 教授)
- 四倉禎一朗さん(特定非営利活動法人 いしのまきNPOセンター 専務理事)
報告
黒部市社会福祉協議会の小柴さんは、富山県黒部市社会福祉協議会の立場では住民や団体を繋ぐプラットフォームとして、また、NPO法人明日育の立場では地域の人材育成と参加を促進する役割で、2つの立場から地域づくりに関わっています。
黒部市のみならず、日本の地方自治体の多くが少子高齢化と人口減に直面している今、「担い手を育て、自分もやる」、「無いものはつくる」、そして「みんなでやるしかない」という視点で活動されているそうです。また、「民間組織としてのプライドと強さ」がNPOの価値として挙げられました。民間がやるべきこと、民間だからできることが必ずあるので、そのステージでNPOの力が求められます。また、多くの市民に対し「参加の選択肢をつくる」ことも、NPOの大事な役割だといいます。さらに、リーダーは既に地域にいるという前提で、そのリーダーを盛り立てる人、すなわちフォロワーこそが大切であるというお話がありました。
分科会B:「活動の担い手を多様化する仕掛けとは?」
登壇者
- 小野寺浩樹さん(特定非営利活動法人 レスパイトハウス・ハンズ いちのせき市民活動センター センター長)
- 豊田善幸さん(特定非営利活動法人 中之作プロジェクト 副代表理事)
- 豊田千晴さん(特定非営利活動法人 中之作プロジェクト 事務局)
- 横澤京子さん(特定非営利活動法人 @リアスNPOサポートセンター)
報告
中之作プロジェクトの豊田さんには、団体の新たな担い手の育成と活動への参画の仕組みについてお話しいただきました。豊田さんは、東日本大震災後、福島県いわき市の古民家を取り壊しから守るために買い取り、1,000人以上の全国からのボランティアと一緒に建物の再生をすることから活動が始まります。その後、古民家を「清航館」と名付け、様々なイベントの活動拠点として開いています。時間の経過と共にイベント利用が徐々に落ち着いた頃、新たに打ち出されたのが「部活動」です。「部活動」は、自発的な活動が前提になっており活動費用も部費(参加費)によって安定的になることや、団体の会員(支援者)になる事で参加できる仕組みは、部活を通した支援者や担い手の拡大にも繋がっています。また、部員によって積極的に活動の情報発信が行われ、これまで関わりを持っていなかった住民や興味をもっていなかった住民に情報が届き、新たな支援者が増えるというサイクルにも繋がっています。
分科会C:「《市民知》をカタチに!地域課題を解決することは可能か」
登壇者
- 吉澤武彦さん(一般社団法人 日本カーシェアリング協会 代表理事)
- 林 正剛さん(特定非営利活動法人 HUB’s 理事長/一般財団法人 都市農地活用支援センター 客員研究員)
- 田尻佳史(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 常務理事)
報告
日本カーシェアリング協会の吉澤さんは、石巻において、津波で車が流出した人の支援から開始し、現在は交通手段が限られた人などを含めた、コミュニティのためのカーシェアリングの取り組みを行っています。カーシェアリングは単純に車の貸出をするのではなく、住民同士の支え合いの媒体となり、課題解決を行っています。例えば、住民同士のグループで運転のお手伝いをし合ったり、車の利用管理を行ったり、日常の自然な助け合いの中で生きがいや地域における居場所と役割が生み出されています。カーシェアリングの運営は、近隣の専門学校による自動車整備や、自動車用品メーカー等の協力など、地域や企業との連携にも支えられています。
さらに、環境に合わせ変化させ続けることを意識すること、先を読む運営が大事だといいます。ご自身の師匠の言葉で「コマのように動くな、タイヤのように動け」を心にして、ひと処に留まらず、常に景色(状況)を変えて動いていく気持ちを持って活動されています。実際に、東日本大震災以降の被災地でも支援活動を行ってきており、仕組みがない場所であっても提案をしていかれています。
分科会D:「つながりを活かした課題解決のあり方とは?」
登壇者
- 成宮崇史さん(認定特定非営利活動法人 底上げ 理事/気仙沼まち大学運営協議会 チーフコーディネーター)
- 菊池亮さん(社会福祉法人 釜石市社会福祉協議会 地域福祉課長兼生活ご安心センター 副センター長)
- 三浦まり江さん(特定非営利活動法人 陸前高田まちづくり協働センター 理事長)
報告
気仙沼で活動するNPO法人底上げの成宮さんは、ボランティアとして気仙沼で出会った仲間と共に地域につながりがない中でどのように活動を展開していったのかを事例としてお話いただきました。底上げは、社会の変化に対応できる人材育成が必要だという課題感から、高校生を主とした若者の主体的なアウトプットの機会を提供してきました。様々なプロジェクトを進める中で、ビジョンや課題感を積極的に発信することで他団体との連携を作ってきたそうです。その最たる事例がNHKの特番です。市役所や教育委員会、他のNPO等と共に取り組んだ2か月間のプロジェクトでは、関わる人たちが同じ体験をし、成果を共有することで「言葉を共通に揃えていく」ことが大事だと実感したとお話しされていました。
参加者アンケートからフォーラム全体への感想(一部)
- 100人超の参加者がいたことはフォーラムの開催の趣旨が時節にマッチしていたかと思う。
- 震災から8年、多くのNPOがいろんな地域でいろんな活動をしてきたが、復興がハード面からソフト面に様変わりしたように、団体のミッションも変わるざるを得ない。NPOの終わり方を含めた新たな再生のやり方を学ぶ機会が必要になってきたかと思います。
- 企業や行政も参加していたが、教育機関や福祉機関などもっと色々なセクターと共有できると良い。
メディア掲載
- 毎日新聞(2018年12月25日掲載 ©共同通信社配信)
NPO関係者ら、復興⽀援を議論 気仙沼 /宮城
*共同通信社配信 - 岩手日報(2018年12月22日掲載)
ニュースクリップ
*この記事・写真等は岩手日報社の承諾を得て転載しています - 三陸新報(2018年12月22日掲載)
住民主役で盛りあげよう~とうほくNPOフォーラム~
*三陸新報 2018年12月22日掲載 - 河北新報(2018年12月24日掲載)
浅野前宮城県知事「NPO活動 復興の中心」
注)上記はすべて各新聞社の承諾を得て転載しています。