活動報告:自主・連携事業
とうほくNPOフォーラム in 陸前高田 2019 ~ 復興の先を見据えて《今、地域のあり方を考える》~(2019年11月27日)
■日程:2019年11月27日(水)
■場所:陸前高田コミュニティホール(岩手県陸前高田市)
■後援:復興庁、陸前高田市、岩手県、宮城県、福島県
■主催:NPOサポートリンク・フォーラム in 陸前高田2019実行委員会
■参加者:147名
開催趣旨
東日本大震災発災から8年が過ぎ、被災各地ではハード面の復旧が一定程度進み、目に見える部分では復興が進んでいると言える状況です。
しかし、被災者の生活復興や地域の再生というソフト面においては、今尚その道のりは長い、という実感がある事もまた現状です。
昨年開催した「とうほくNPOフォーラム in 気仙沼2018」では、「復興の先を見据えて《今、地域のあり方を考える》」というテーマを設定し、「地域における多様な担い手が、主体性を持ってつながりを生み、住民を巻き込んで未来を創る」というまとめを行いました。
このまとめを受けて、今年は「復興の先を見据えて《現在(いま)、NPOは何をするべきか》」というテーマを掲げました。NPOだけでなく、市民、企業、行政を含む、地域の多様な担い手の役割についても考える場 として、本フォーラムを実施します。
実施概要
オープニングセッション
「持続可能な地域の仕組み – NPOに期待される役割とは何か?」
オープニングセッションは、講演とディスカッションの2部構成で行いました。
講演 加藤憲一氏(神奈川県小田原市長)
神奈川県小田原市の加藤憲一市長をお招きし、「持続可能な地域の仕組み」について、小田原市における取り組みとともにお話いただきました。
- 持続可能な都市づくり
小田原市は、持続可能な都市づくりをテーマとして取り組みを行ってきた。政策についても、持続可能であるか、という視点で策定、実施してきた。そのように取り組んできたことに対して、SDGsが後からやってきてくれたという気持ちで、心強く感じている。
- まちづくりの基本的な枠組み
小田原市は人口約19万人。漁業・農業・林業の産業バランスがとれた地域である。また、市民の力が非常に強い地域でもある。
行政運営の指針として、市民と共に未来を考えるというコンセプトを持つ、第5次総合計画「おだわらTRYプラン」がある。このプランには、1)新しい公共をつくる、2)豊かな地域資源を生かしきる、3)未来に向かって持続可能であるという3つの命題がある。
2つ目の枠組みは、「地域別計画」である。市内のすべての地域で、自治会を中心に数年間をかけて策定された。各地域にスローガンがある。
3つめの枠組みは、「自治基本条例」(平成23年制定)の存在である。ここでは「市民が、生き生きと暮らし続けることのできるまちの実現」を目標としている。そのために必要なキーワードは、市民力と協働である。この条例が、行政の憲法のようなものだと考えている。条例の内容の検討には、委員会のほか、市内在住、在勤、在学の方も参加できる環境づくりが導入された。
ディスカッション
登壇者
- 加藤憲一氏(神奈川県小田原市長)
- 戸羽 太氏(岩手県陸前高田市長)
- (進行)鹿野順一(特定非営利活動法人 @リアスNPOサポートセンター 代表理事)
分科会A:地縁組織とNPOのこれから
登壇者
- 若菜千穂氏(特定非営利活動法人 いわて地域づくり支援センター 常務理事)
- 宝楽陸寛氏(特定非営利活動法人 SEIN(サイン)事務局長)
- (コーディネーター)四倉禎一朗(NPO法人 いしのまきNPOセンター 専務理事)
地域の人に寄り添い、目線を合わせながら地域づくりを
地域課題の解決するためにNPOと地縁組織が、お互いの強みを活かせる協働のかたちとはとはどのようなかたちなのか。新たな関わり方を考える機会となりました。
いわて地域づくり支援センターの若菜さんは、岩手県内陸部の農山村地域を中心に地域づくり支援を行っています。中間支援組織としてNPOは地縁組織が課題と考えていることをどう共有し、どう協働していけばよいかをテーマに、地縁組織の現状と実態、地域課題の抽出やその課題解決に向けた支援、そして支援組織と地縁組織の関係について、事例も取り上げながらお話いただきました。
SEINの宝楽さんは大阪府堺市の泉北ニュータウンを主なフィールドに、多様な主体の協働を推進しながら人やまちが元気になるコミュニティづくりを進めています。ニュータウンの持続可能な社会実現のための地域支援の考え方について、図書館づくりや物々交換のマーケット、持ち寄り晩御飯会などの事例を紹介いただきながら、人と人とのつながりを豊かにするコミュニティづくりについてお話しいただきました。
分科会B:地域における企業との連携
登壇者
- 日下 均氏(長町一丁目商店街振興組合相談役)
- 千葉和義氏(NPO法人 Azuma-re 代表理事)
- (コーディネーター)深澤秀樹氏(認定NPO法人 ふくしまNPOネットワークセンター 常務理事・福島市市民活動サポートセンター 常勤顧問・元福島キャノン(株)代表取締役)
報告
課題解決のための連携の手法や具体的なアクションを考える
仙台市の長町一丁目商店街振興組合相談役の日下均さんは、当時課題であった「商店街の低迷」、「高齢者・障がい者の移動」を解決するため「誰でも行きやすいまちを作ることで地域を活性化する」を目標に地域内の商店とNPO双方に働きかけました。そして両者が課題解決に『タウンモ
ビリティ(長時間の歩行に困難のある高齢者や障がい者に電動スクーターや車いすを貸し出す)事業』を柱とし、同じ手法を取ったことで協働につながったことのお話をいただきました。
宮城県栗原市のNPO法人Azuma-re代表理事の千葉和義さんは、『くりでんミュージアム(廃線ローカル鉄道博物館)』に一体感がないという課題感から、そこで活動する地域おこし協力隊や、施設内の関係団体にヒアリングを実施し、「連携したことはない」けれど「連携に向け話し合う場は必要だ」とお互いに認識していたことが明らかになりました。そこでコーディネートとして『若柳合同ミーティング』を開催。今では定期的に開催され協働の関係性が出来たというお話をいただきました。
分科会C:地域の作り方
登壇者
- 横田能洋氏(特定非営利活動法人 茨城NPOセンター・コモンズ 代表理事)
- 小玉順子氏(特定非営利活動法人 おおさき地域創造研究会 事務局長)
- (コーディネーター)三浦まり江(特定非営利活動法人 陸前高田まちづくり協働センター 理事長)
報告
被災地の未来を見据え、そのあるべき姿を考える
分科会Cでは、市民が主体的に地域に参加していくため、これからの地域社会の中でNPO・市民活動団体に期待される役割を探ることを狙いとしました。
最初に、東北圏地域づくりコンソーシアム(宮城県)の髙田篤さんより、「地域社会の担い手の変遷」として、NPO・市民活動団体以外の主体が地域で果たしてきた役割について配慮することが大切という点を指摘いただきました。
そこから考える「地域の作り方」とは何か、キーワード「地域のつながりをデザインする」を念頭に置きながら、登壇者お2人の事例を伺いました。
茨城NPOセンターコモンズ(茨城県)の横田能洋さんから、多様で異なる立場の主体が、自分の組織の強みや役割を発揮しながら、連携して地域に貢献していく枠組みを作っていく「地域円卓会議」について、協議から協働に至るまでのプロセスや、協議の場づくりに必要な工夫をお話しいただきました。
おおさき地域創造研究会(宮城県)の小玉順子さんから、被災者支援に関わる主体に呼び掛けて開催した「ステークホルダー会議」の事例紹介がありました。話し合いの場への参加と共感を通してつながりを生む実践例を紹介し、地域づくりに対話の場は欠かせないツールであることを熱くお話しいただきました。
分科会D:若者の巻き込み方
登壇者
- 矢野明日香氏(一般社団法人 まるオフィス スタッフ)
- 立花淳一氏(まちづくりサークル「からくわ丸」代表)
- (コーディネーター)成宮崇史・佐藤 賢(気仙沼まち大学運営協議会)
報告
次世代・若者の地域参画の仕組みについて考える
分科会Dでは、「若者の地域参画」をテーマに宮城県気仙沼市で活動している2名の方を登壇者としてお招きし講話をいただいた後、参加者全員でそれぞれの地域の現状を共有するワークショップを行いました。
一般社団法人「まるオフィス」の矢野明日香さんからは、実際に自身も移住者として気仙沼に来てから地域のコミュニティで活動を継続していく中でネットワークが広がってきたことや、「ぬま大学」という2,30代に向けた半年間の人材育成プログラムを行なっていることで気仙沼の若者が町の中で自分のやりたいことを見つけ、実践を通して地域活性に努めていることを紹介していただきました。
まちづくりサークル「からくわ丸」の立花淳一さんからは、まちづくりに全く興味のなかった若者たちが、自分の利益となるようなきっかけ(講話では下心と表現)から人との出会いが広がり、仲間と共に楽しく活動していることが結果としてまちづくりとなっていたこと、「ぬま大学」に参加し、自分が地域でやりたいことを本気で考え、現在はまちづくり協議会のメンバーとしてプランの実践を行なっていることを紹介していただきました。
クロージング
クロージングでは、4つの分科会において、議論の成果として出たキーワードを紹介しました。報告は、フォーラムの実行委員で協力をいただいているNPO支援組織の皆さんから行いました。各報告に対して、他分科会の報告者によるコメントも行われました。
参加者アンケートからフォーラム全体への感想(一部)
- 当事者が、これほど集まる事はスゴイと思いました。事務局の皆様、お手伝いの皆様に支えられてこそのフォーラムと、感嘆の思いと感謝の気持ちで居ります。増々のご発展を期待しております。東北のNPOが集結する機会も少ないので、せっかくなら懇親会などもあればより話が広げられるかな?と思いました。今後の連携のためにも。
- 昨年も参加しましたが、今回も大変勉強になりました。他の団体がどういう取り組みをしているのか、どういう考えなのかなど自分以外の考えが聞けて刺激になりました。ありがとうございました。
- 個々のニーズが多様化する中、行政や企業ではカバーしきれない地域課題に取り組むNPOの意義について再確認できました。
- これまですでに多くの機会が設けられてきたかとは思いますが、地域に関わる企業担当者や大学関係者なども交えた、産学官民のパートナーシップの現状やあり方などについても詳しく知る場があれば幸いです。今回は参加させていただき、ありがとうございました。
☆本フォーラムは、東北沿岸地域の中間支援組織が構成する「NPOサポートリンク」のネットワークによる事業の一環として開催されました。
メディア掲載
- 三陸新報(2019年11月20日付掲載)
気仙沼から2人参加 陸前高田NPOフォーラム - 東海新報(2019年11月22日付掲載)
27日にNPOフォーラム 期待される役割など探る - 東海新報(2019年11月29日付掲載)
これからの役割考える とうほくNPOフォーラム - 読売新聞(2019年11月28日付掲載)
NPO被災地役割議論 - 岩手日報(2019年11月29日付掲載)
地域の未来担うNPO役割議論 とうほくフォーラム
この記事は岩手日報社の許諾を得て転載しています。
注)上記はすべて各新聞社の承諾を得て転載しています。