活動報告:助成事業
被災者の生活再建・就労支援に取り組む ワンファミリー仙台
「くらしの再生」で何よりも基本になるのは生活リズムを整えてからの雇用の再生だ。ワンファミリー仙台(以下ワンファミ)は、10年前からホームレスなどの生活困窮者の自立支援に取り組んできた。その中で就労支援の経験もあり、職業紹介事業者の資格ももつ。今回のプロジェクトは、その実績と資格を生かして被災者の就労先を開拓し、雇用に結び付けるものだ。
「今日(2012年10月20日)までに、89の求人先を開拓してきました。」このプロジェクトを担当する平井知則さんは、雇用条件などを詳しく記したシートの分厚い登録ファイルを前に、その手応えを語る。すでに300近い企業を訪問してきたという。もともと飛び込みの法人営業の仕事をしてきたから、企業まわりは得意だ。「相談に来た人は115人、そのうち28人が就職にこぎつけました。就労した人は平均7〜8回は相談にきていますね。」
個別相談の密度の高さを思わせる。平井さんは震災前からワンファミで困窮者の生活支援をしてきた。職を求める人の切実な気持ちや仕事をするうえでの特性もよくわかる。
理事長の立岡学さんは、これまでの経緯をこう語る。「当初計画では仮設住宅のある「あすと長町」で週1回の相談会をすることにして2012年4月からスタートしたんですけど、それだと長町の仮設の人しか利用しにくい。そこでパーソナルサポートセンター(以下PSC)が2012年6月に仙台市との協働で就労支援相談センターを開設したのに合わせ、隣の部屋を借りて協力して進めることにしたんです。相談もいつでも対応できるようにしたから、相談者は急に増えました。」
県庁にも市役所にも近く、アクセスもいい。各地のみなし仮設(民間借り上げ住宅)や在宅の人なども、自由にやってくるようになったそうだ。
PSCは2011年3月、震災の直前に設立された。ワンファミなど複数の団体を設立母体とした一般社団法人で、困窮者などの寄り添い型の生活支援を目指す。2012年6月から仙台市と協働して仮設住宅入居者の生活支援を行っている。立岡さんは、この業務執行理事も兼ねているから、徒歩で5分くらいの二つの拠点を行ったり来たりということになる。
では職業紹介もPSCでできないのか。それは無理という。何よりも職業紹介の資格をもっていないし、経験あるスタッフもいない。ゆえに就労相談や就労準備の支援と雇用後のフォローを担当する。ワンファミはそれ以外の求人企業の開拓と求人と求職者のマッチングをすすめる。それはハローワークの仕事ではないのか。それも難しいという。個別の企業を回って雇用機会を開発し、職を求める人との相談を重ねて就労先と折衝するわけだが、そこまではハローワークの通常業務ではできない。
それでもこの実績が認められ、10月からは月2回のペースでハローワークによるPSCでの出前相談が始まった。この意味は大きいという。今回の助成プロジェクトの効果がはっきりすれば、行政もさらに協力しやすくなる。長期的には、公的な支援による展開も可能になろう。民間の取り組みを尊重しながらも、そこに期待したい。
文責:日本NPOセンター 山岡義典