活動報告:助成事業
助産所で産後母子の入所ケアを 一般社団法人福島県助産師会
出産後の不安やストレスに加えて、慣れない土地での避難生活や放射線汚染の下での育児に対して悩みや不安を抱える母親が少なくない。このような母子に対して、母親の心身の疲労軽減と精神的な安定をはかるなかで、母親が本来持っている“母性”を取り戻し、子どもの健全な成長を促すよう支援しているのが、福島県助産師会である。
入所した助産所において24時間態勢で行われるケアとは、赤ちゃんのお風呂や観察、赤ちゃんとの過ごし方などの育児指導、母乳の与え方などの母乳育児指導、さらには母体の心身疲労回復のためのケアなどである。福島県助産師会の代表理事石田登喜子さんと会津助産師の家“おひさま”の責任者二瓶律子さんは、「なんとなく不安気な顔付きで入所してきたママさんが、日毎に笑顔を取り戻してくる」と、語ってくれた。
この入所ケアの主な対象者は、出産後1年以内の母子で、出産直後のケアが必要な期間を仮設住宅などで過ごさざるを得ない母子、避難生活や放射能汚染という環境での育児で心身ともに疲れ果てている母子、母乳育児を希望しながらも母乳が出ない・乳房トラブルを繰り返す母子、強い育児不安を抱えている母子などである。
福島県助産師会が震災開設直後に急遽、産後ケア施設として開設・運営しているのが、会津助産師の家“おひさま”(猪苗代町)である。他に県内2か所の助産所(こみゅーん助産院(いわき市)、中嶋助産院(南会津郡田島町))に協力を依頼し、産後母子ケアを実施している。
各々自己負担額は1日当り3000円で、母子一組最長14日間入所できる。2011年7月の開設から2013年5月末までに、77組の母子が入所している。平均的な入所日数は、10.2日である。
ママさんからは、「おっぱいトラブルや沐浴の仕方などなんでも・いつでも気軽に相談できる」、「悩みやSOSなどはっきりと話せるようになった」、「子どもの“泣きも少なくなった」、「不安や疑問、悩みごとを残さずに退所できた」などの声が寄せられている。子どもとの接し方に変化が見られ、母親としての自信を取り戻し微笑みを浮かべて退所するママさんたちである。
出産直後の母親と赤ちゃんを日帰りや宿泊でケアする「産後ケア」のニーズが高まってきている。その社会的背景には、核家族化で実家に頼れないとか、高齢出産で実家の両親が高齢化していて面倒見ができないなど「里帰り出産」が難しくなってきているという事情がある。助産師会の石田さんは、「これまでは3~4世代の同居も多かった福島であるが、震災や原発避難で家族がバラバラとなり、育児ノウハウや経験がうまく伝わらない」と、福島県独特の事情を指摘する。
全国的に関心が高まり、一部の自治体で芽生えつつある「宿泊型産後ケア事業」。それだけに、一般社団法人福島県助産師会が市民レベルの活動として先駆的に取り組んでいる「産後母子入所ケア事業」に注目したい。