活動報告:組織基盤強化事業
テーマ別研修「組織運営に望ましい財源とは」
■日時:2018年8月30日(木)~31日(金)
■場所:ホテル紫苑(岩手県盛岡市)
■参加者:岩手、宮城、福島の被災地で活動するNPO23団体の役職員40名
実施概要
東日本大震災の発生後、被災地では多くのNPO組織が活動し、地域の復興を支えている一方で、2020年度末で国の復興期間が終了するとともに、様々な助成金や補助金も終了を迎えることが予想される中、持続可能な組織運営をどうすればいいのか、悩んでいる団体も少なくない。そこで、NPOの持続可能な組織運営に必要なことは何か、活動財源とは一体どういうものなのか、それをどう自団体に活用していけばいいのかを、事例発表とワークを通じて考える機会とした。
プログラム1日目は、組織の財源について基本的な学習をしたのち、3人の講師から「会員・寄付・自主事業」というテーマに合わせて事例発表をしていただいた。
2日目は、日本NPOセンターの田尻による講義「成功する資金計画の8箇条」に続き、「2021年度の財源」に関するワークショップを行った。
プログラム
1日目(午後)
◎導入講義「NPOの財源構成と資金の種類」
講師:認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター スタッフ 渡辺日出夫
事例発表をより理解するために、知っておきたいNPOのこと2「資金編改訂版」(アリスセンター/日本NPOセンター発行)をベースにNPOの4つの主な収入源や資金間の関係性などを確認した。
◎事例発表1「会費と向き合って20年」(テーマ:会費)
講師:認定特定非営利活動法人 ACE 代表理事 岩附由香さん
団体設立から20年を迎え、会員の考え方も変わってきた。経営者として悩みながら歩んだ20年を振り返りながら話をしていただいた。ACE設立当時は個人会員を集めていたが、認定NPO法人ではマンスリーサポーターになってもらうと寄付控除が受けられるため個人は会員ではなくマンスリーサポーターを推奨するようになった、現在は法人会員獲得に力をいれていることなど伝えてくれた。また、中長期計画においても企業への働き強化をひとつの柱とするとともにスタッフが長期的に働けるような働き方改善などの組織全体のことを考えてることを共有してくれた。
◎事例発表2「教科書通りのファンドレイジング事業立ち上げ」(テーマ:寄付)
講師:認定特定非営利活動法人 ノーベル ファンドレイザー 北村政記さん
事業立ち上げから5年間で累計8千万円の寄付を集めた経験から寄付集めの手順について丁寧に話をしていただいた。個人と法人によって伝え方を変える必要性や企業の部署による違いを話してくれた。個人ファンドレイジングにおいては「現状―課題―解決策―実現したいこと」などしっかり整理をしたうえで、伝える必要があるが、法人ファンドレイジングにおいては先方のメリットをどうみせられるかがポイントになる。
◎事例発表3「補助金でできないことは自主事業で」(テーマ:自主事業)
講師:特定非営利活動法人 With優 代表理事 白石祥和さん
人口約8万人の山形県米沢市でフリースクールを中心に事業を行い、子どもにも大人にも優しい地域社会づくりを続けているルーツや事業運営についてざっくばらんに話していただいた。自主事業の立ち上げかたは一つではなく、様々な資金を事業の性格にあわせて選ぶことや寄付をいただいたり、何らかの協力をいただいているすべての企業に年1回は必ず訪問して報告と感謝を述べているなど具体的な行動を教えてもらった。
◎質疑応答
事例発表の後は、ワールドカフェのような形式で1回20分の質疑応答タイムを3セット実施して、講師3人全員に質問する機会をつくった。3セットとも同じ講師のところにいる参加者もいれば、3人全員をまわる人など、参加者の関心や興味に応じて活発な質疑が行われた。
講師からは「ファンドレイズの手前に何をすればよいかという質問が多かった。中期計画、少し先の事業を考えてみると、そのためにするべきことが見えてくる。ラッキーなことの前には地道な努力(種まき)がある(岩附さん)」「利用者やスタッフ募集についての質問、他者との差別化についての質問が多かった。個々の声を丁寧に拾って積み重ねていくことが大切(北村さん)」「今までこんなに質問されたことがなかったので驚いたが、みなさんの真剣さが伝わりこちらも気合がはいった。事業についての質問の他、自分自身の原動力についての質問も多かった(白石さん)」等のコメントがあった。
2日目
◎講義「成功する資金計画の8箇条」
講師:認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 常務理事 田尻佳史
日本NPOセンターが東日本大震災復興支援をはじめてからずっと東北3県をまわり、数百の支援団体と話を続けている田尻が「組織運営に望ましい財源の資金計画」をたてる8箇条を話した。参加者には経営層も多かったこともあるが「決断はリーダーの役割なり。資金確保に向けて、船長役となるべし!」というストレートかつ大事なポイントもあげられた。
◎グループワーク1「自組織の財源バランスを確認しよう」
まずは自団体の財源バランスがどうなっているのかを直近終了年度の収入をみながらチャートを作成し、客観的に分析を行った。また、他団体とも共有することで財源バランスの違いをお互いに感じあった。
◎グループワーク2「3年後の財源バランスを考えてみよう」
2020年度で様々な資金助成終了見込みがあるなかで、2021年度はどのような財源を生かして活動を続けていくのかを各団体が考えた。また、参加者同士で共有をし、お互いにアドバイスなどをしてさらに考える時間となった。
総括コメント
(認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 常務理事 田尻佳史)
- 資金集めは「やる」か「やらない」か。
- 事業は「やりたいこと」なのか「必要とされていること」なのか。
会費は何のために必要なのか。お金のためであれば違う方法もある。
顧客を持つため、スケールを出したいのであれば「広く」「浅く」も必要。 - 寄付は「ギブアンドテイク」。いただいたものをどのように還元するのか。
たとえばある日「お金はないけれど、ニンジン100箱あげます」と言われたらどうする? お金に換える?どうやって?いろいろな工夫があるはず。真似ることも大切。時には頭の体操をしてみよう。
参加者の声
(導入)印象に残った言葉など
- 寄付者への報告は「やったこと」が大事なのではなく、「どのように社会的変化が起きたのか」を伝えることが大事であるという部分が印象に残りました。
(事例:ACE岩附さん)印象に残った言葉など
- 少々難しい話でついていくのにやっとだったが、自分の目標を口に出して話すことでいつの間にか、その道ができていた と聞いた時は、その通りだなと思った。
- 事業について毎年評価を行っている点や、ビジョンの共有を徹底している点も組織づくりにおいて、とても参考になった。
(事例:ノーベル北村さん)印象に残った言葉など
- ヒアリングが大事といっておられたのが印象に残った。支援者のみに限らず、利用者や法人で働く方一人ひとりの話を聞くことで真のニーズを捉えられるのだと感じた。
- ファンドレイジング=ファン度レイジング
(事例:With優白石さん)印象に残った言葉など
- 寄付先に一軒一軒足で回っていると聞き、一人ひとりの支援者を大事にすることでお金だけの関係ではなく、人としての信頼関係ができるのだなと感じた。
- 企業寄付などが集まりにくい東北で頑張って活動していくには、白石様のような情熱も必要だと思いました。
(講義「成功する資金計画の8箇条」)印象に残った言葉など
- その法人の身の丈にあった計画を立てることが大事だと感じた。
- 計画はひとりで考えるのではなく、皆で知恵を出して考えるべきということ。それにより、自団体への愛着もわき、自分ごととなると感じた。
(ワーク)感想、団体内での反応や意見など
- 近々のことばかり考えて動いていたが、3年先のプランを考えた時に今やらなければいけないことが、はっきりと浮かんできた。スタッフ間でこれを共有し、全員で先の事を考えられる法人を目指していきたい。
- 短い時間でしたが自分たちに足りない部分が浮き彫りになり、それを皆で考えるよい時間をいただいたと思いました。