活動報告:組織基盤強化事業
テーマ別研修「コミュニティワークを学ぼう」
■日時:2019年10月25日(金)~10月26日(土)
■場所:秋保温泉ホテルニュー水戸屋
■参加者:岩手、宮城、福島の被災地で活動するNPO17団体の役職員22名
実施概要
震災から8年が経過し、NPOによる復興支援の内容も大きく変わりました。例えば、社会的弱者の支援や、崩壊した地域社会の再興など、平常時の課題にとても近い内容の取り組みが増えています。
今回の研修テーマの「コミュニティワーク」は、ややもすると社協による事業や、社会福祉における専門的な領域として捉えている人が多いかもしれません。しかし、被災地のNPOが行う、例えば子ども支援や、高齢者支援などの活動、また福祉的要素が欠かせない、まちづくり活動や防災活動といった地域活動全てがコミュニティワークと呼べるかもしれません。たとえ福祉分野以外であっても同じことがいえるかもしれません。
そこで今回の研修では、改めて「コミュニティワークの基本的な知識と実践」を学ぶことにしました。
- 自分達の活動をコミュニティワークの視点で捉え直すこと
- 今ある地域の課題解決の方法を知ること
- みなさんの団体が地域における1つの社会資源としてさらに力を伸ばしていくことを期待して実施しました。
プログラム
1日目午後
プログラム① 「基調講演」
講師:上野谷 加代子さん(同志社大学 社会福祉学科 教授)
上野谷先生自身が「たすけ上手・たすけられ上手」という自己紹介からはじまり、「コミュニティってなあに?」という基本を学ぶことから本題にはいっていった。
知っていてそうで、よくわかっていない「ソーシャルワーク」や「コミュニティワーク」について、関西弁をベースに軽佻なしゃべりでユーモアを交えながら丁寧に説明をしてくださった。また、社会福祉協議会の役割やNPOとの違いも説明してくださり、上野谷先生からが「最初は社会福祉協議会に相手にしてくれないかもしれないが、あきらめずに地域の社会福祉協議会に足を運んでください。コミュニティに対して協働できるのが良いので、、、」とコメントもいただいた。
1日目午後
プログラム②「座談会(社会福祉協議会の事業からコミュニティワークを考える)」
パネリスト:
菊池 亮さん(社会福祉法人 釜石市社会福祉協議会 地域福祉課長)
上野谷 加代子さん(同志社大学 社会福祉学科 教授)
コーディネーター:
田尻佳史(日本NPOセンター 常務理事)
はじめに菊池さんから社会福祉協議会の事業についてと東日本大震災のときに何ができてできなかったのか、NPOとの協働がどうだったのかをお話いただいた。その後、上野谷先生かコーディネーターの田尻と本音にせまるトークパネルが展開された。
2日目午前
プログラム③「実践紹介1(わたしとコミュニティワーク‐実践活動から‐)」
講師:品堀 学さん(特定非営利活動法人 ポラリス 事務局長)
「障害を持つ人も持たない人も共に生き はたらける地域づくり」を目的に2015年に宮城県山元町にポラリスが設立された。障がい者支援は、福祉業界だけで完結してはならないと思い、障がい者が地域とともに学び、ともに活動することで、地域が障がい者について理解するだけではなく、共生していく社会を山元町で実践してきた。障がい者の特性を生かしたアートを中心に、地域の担い手の一人になれるようにコミュニティワークを行っていると話をしてくれた。
2日目午前
プログラム④「実践紹介2(わたしとコミュニティワーク‐実践活動から‐)」
講師:伊井野 雄二さん(特定非営利活動法人 赤目の里山を育てる会 理事長)
生後6か月で右足の機能を失ってから障がいを持つ身として生活をしてきた、医療従事者として働いていた際にゴルフ場反対運動に関わったのをきっかけに里山保全運動を中心とした地域づくりをライフワークにするようになったという。しかし、地縁団体とは良好な関係をつくるには時間がかかったという。そのような関係であったが、地域のための地元との協働事業をつくりながら少しずつ関係性を構築していった。その結果、今ではお互いに良い関係で一緒に地域発展のために活動をしている。
2日目午後
プログラム⑤「座談会(コミュニティワークをNPOの活動から考える)」
パネリスト:
上野谷 加代子さん(同志社大学 社会福祉学科 教授)
菊池 亮さん(社会福祉法人 釜石市社会福祉協議会 地域福祉課長)
品堀 学さん(特定非営利活動法人 ポラリス 事務局長)
伊井野 雄二さん(特定非営利活動法人 赤目の里山を育てる会 理事長)
コーディネーター:
田尻佳史(日本NPOセンター 常務理事)
参加者が地域における1つの社会資源としてさらに力を伸ばしていけるように、コミュニティワークをするなかので苦労話や話の持っていきかたのポイントなど、普段ではあまり聞けない話をしていただいた。「あの人だからできるだけで自分たちには無理」ということではなく、どんな地域でも想いをもち、焦らずに丁寧なコミュニケーションをとることで道は開けるというお話や自らも学んでいく姿勢も必要という声もあった。
各個人及びテーブルで今後どうやってコミュニティワークをしていくか(何を大切にするのか)を話し合い発表した。
最後に講師のみなさんから「今回参加したみなさんは、すでにコミュニティワーカーとして活動をしているので、自信をもって今後もがんばってください」という励ましの声をいただいた。