第1期第1回継続助成

第1期第1回継続助成(2013年04月01日から1年間)

第1回新規助成の助成期間が終了することに伴い、第1回助成先団体を対象に初めての継続助成を実施しました。選考委員は、活動の発展の可能性が大きい案件は助成するという基本方針の下、4つの評価基準(実績評価、発展・展開性、実現性、予算の妥当性)に基づいて総合評価をし、選考を行い、着実な実績をあげてきた7団体(「いのち」2団体、「くらし」5団体)を継続助成しました。

採択事業一覧

団体名 事業名 活動場所 助成額(万円)
 特定非営利活動法人 MMサポートセンター 長期にわたる震災(原発)被災の発達障害児及び家族への継続支援(心理療法・感覚統合・作業療法を含むトータル支援) 福島県・宮城県・全国 500
 特定非営利活動法人 こども福祉研究所 明日を担う岩手県山田町の子どもたちのための学習支援・軽食提供・地域交流事業 岩手県山田町 498
 特定非営利活動法人 ワンファミリー仙台 ひとり、ひとりの状況に応じた仮設住宅入居者等への就労支援を中心とした生活再建事業 宮城県仙台市 500
 特定非営利活動法人 中之作プロジェクト 中之作 直してみんか・使ってみんかプロジェクト 福島県いわき市 800
 特定非営利活動法人 土佐の森・救援隊 これまで未利用の森林を活用した、被災者雇用拡大事業 / 被災地域から発信する本当の森林・林業・木質エネルギー業の再生 岩手県大槌町・宮城県気仙沼市・宮城県南三陸町周辺・宮城県石巻市 500
 特定非営利活動法人 まきばフリースクール くらしの便利屋さん 宮城県石巻市 300
 一般財団法人 たんぽぽの家 Good Job!東北プロジェクト 福島県各地・宮城県各地 700

概要

(※第3回新規助成・第1回継続助成を同時選考したため、両方をまとめて掲載しています)

第3回新規・第1回継続の選考を終えて―
被災者や被災地の特定の課題から地域社会全体の課題に

選考結果の概要

今回は新規については第3回の助成になる。昨年4月から始まった第1回、10月から始まった第2回、そしてこの4月から始まる第3回の助成である。同時に今回は、この3月終了の第1回助成に対する第1回の継続助成も行った。テーマはこれまで同様、いずれも「被災地にNPOの知恵と力を」。<いのちの再生(人道支援)>と<くらしの再生(復興基盤支援)>の2つの部門からなる。

新規・継続を合わせた選考結果を要約すれば、新規では98件の応募の中から8件を、継続では9件の応募の中から7件を選出し、計15件の助成を行うことになった。新規は10倍を超える厳しい倍率になり、応募の多くにお応えできなかったことを申し訳なく思う。継続は着実な成果が期待できそうなものはできるだけ採択する方針で、応募の多くにお応えできたかと思う。助成額にすると新規は4,450万円、継続は3,798万円、合計では8,248万円となる。

<いのち>と<くらし>の別でみると、新規では4件・4件でバランスしているが、継続では2件・6件と<くらし>の比重が大きい。併せると6件・10件。以下、新規と継続について、選考経過と選考結果の特徴を見ておきたい。

新規助成について

新規については昨年11月に公募を開始し、この12月に締め切った。その結果98件の応募をいただき、まず日本NPOセンターの担当スタッフ4名による予備選考を行った。各自がすべての応募案件を読み込み、選考基準に照らしてABC評価を行い、その集計によって上位45件を選考委員会にあげることにした。

それらの応募内容を選考委員は事前に精査し、4〜5件の推薦と2件の推薦を選出した上で2月13日の選考委員会に臨んだ。委員会では、推薦のあったプロジェクトの意義や実現性を1件1件審議し、助成候補を絞っていった。各委員の評価の意図や考え方を報告しあい、個別の案件ごとに論議しあったので、必ずしも単純に推薦の多いものから採択したということにはなっていない。意見の分かれたものについては、最終的には再投票して決める場面もあった。

その結果をもとに、事務局スタッフは助成候補や補欠になった応募者と連絡を取り、2名1組で現地インタビューに向かい、応募計画の実現性や課題、実施体制等の確認を行った。その結果は2月27日に委員長に報告され、委員長決裁として助成先と助成額を決定した。

助成プロジェクトの概要についてみると、<いのち>では、1. 母と子、2. 遺族、3. 不登校・引きこもり・ニート、4. 産後の母子、に関するケアあるいは居場所づくり4件が対象となった。このうち1と2は日本NPOセンターの現地NPO応援基金による1年間の組織基盤強化助成を受けた団体で、その一定の成果が今回の助成に結びついたと言えるかもしれない。<くらし>に関しては、1. 借り上げ住宅住民支援、2. 伝統工芸品等の復興による新たなコミュニティ形成、3. 母親たちの就労の場づくり、4. 障害者の生活再建と日中活動支援、の4件が対象となった。

これらのうち<いのち>の3と4、<くらし>の1と4は、福島県において故郷を離れざるをえなかった原発避難者を支援するものである。いつ帰郷できるか見通しのたたない避難先で、地域の人々とどのようなコミュニティをつくっていくのか、これらの助成プロジェクトは、このような視点からもその成果に期待したい。

継続助成について

継続助成は、このプログラムでは初めての経験である。新規と同様に書面審査のみとするか、これまでの報告も踏まえた応募内容のプレゼンテーションを行うべきか、迷った挙句に後者で進めることになった。選考委員にも応募者にも、負担の多い方法である。

選考委員には事前に応募書類を読んでおいてもらい、2月6日に仙台まで足を運んでいただいた。9件の応募団体にも時間を定めて仙台まできていただき、プレゼンをしていただくとともに活発な質疑に応答いただいた。厳しい質問も多く、大変緊張した経験ではなかったかと心苦しく思う。プレゼンを終えて選考委員はABC評価を行い、それをもとに審議に入った。それぞれについて熱い議論の末、発展の可能性のあるものはできるだけという方針で9件中7件を継続助成することとし、2月13日の新規の選考時に正式に助成対象を決定した。その後、事務局で必要な調査と調整を行い、2月27日の委員長決裁で助成額を決定した。

助成プロジェクトの概要を見ると、<いのち>については、1. 福島県南相馬市から宮城県名取市に拠点を移して発達障害児や家族を継続支援するもの、2. 岩手県山田町の子どもたちに学習支援等を行うものの2件。これに対して<くらし>は、1. 被災者の就労先開拓と就労支援を行うもの、2. 被災した古建築を保存修復して復興拠点に活用するもの、3. 森林活用によって雇用拡大を目指すもの、4. 不登校や引きこもりの人たちによる僻地の被災者の日常生活を支援するもの、5. アートとデザインの導入で障害者の仕事を開発するものの5件に及ぶ。これらはいずれも、これまでの助成で着実な実績をあげつつあると認められ、さらなる助成で一層の成果が期待されるものである。単なる活動の延長というより、次のステップへの展開といえる。

なお応募のうち2件は採択にならなかった。その1件は、事柄としては重要であるもののNPOによる支援活動というよりも学会としての本来活動という性格が強いためであり、他の1件は、今進めている助成プロジェクトを3月末までに完了することには無理があると判断したからである。計画延長して完了すれば、次回に応募のチャンスはある。

新たな特徴的な傾向

被災者や被災地の状況は刻々と変化しつつある。その傾向は、半年毎の応募の変化にもよく読み取れる。特に今回の応募の特徴としては、新規についても継続についても、直接的に被災者のみを支援するプロジェクトから、その周りの人々も含めた地域社会全体の課題に取り組むプロジェクトに移ってきたことがあげられる。どこまでが被災者支援なのか、分かりにくくなってきたということでもある。発災後2年を経た現在、その取り組みが地域社会全体へと広がる傾向は、当然とも言えよう。被災者が仮設住宅から復興住宅や自前の住宅へと移りはじめる中で、被災者特有の課題が被災者を含む地域社会全体の課題へと推移するのは、むしろ望ましいことでもある。このような動向を見届けた包括的な政策や取り組みこそが、重視されるべき時期になったとも言える。NPOにとっては、特別の時期の特別の活動から、通常の時期の通常の活動への移行でもある。

今回助成対象となったプロジェクトの多くも、その受益者・受援者を直接的な被災者に限られない。むしろその周辺の人々も含むことによって、よりよい成果が得られるのではないだろうか。プロジェクトの成功の鍵は、被災者を超えた視点をどうもつかにかかっているのかもしれない。

しかしその場合、被災者の支援のために寄付された財源で、そのどこまでを助成すべきかには議論がある。今回の助成額の決定にあたっては、その点で悩むことが多かった。助成金は被災者に関わる部分に重点配分し、それ以外の部分についてはできるだけ自主的に取り組んでいただくよう、無理をお願いしたものも多い。今後の助成では、その点をどう考えるのか、課題として検討しておかなければいけない。

タケダ・いのちとくらし再生プログラム選考委員会委員長
(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 顧問)
山岡義典

第1回継続助成 選考委員一覧

いのちの再生:人道支援

特定非営利活動法人 MMサポートセンター

応募団体は、福島県南相馬市を拠点に浜通り地区(大熊町などを含む)の、ADHD(注意欠陥多動性障害)やアスペルガーなどの発達障害児とその家族にたいする支援活動を20年以上続けてきた。

助成1年目では宮城県名取市に移った拠点で、原発事故によって各地に避難した発達障害児や家族への支援を、電話相談や訪問相談などを通して継続してきた。避難当初に見られた急激な不安や大きなトラブルが解消されつつある一方、生活環境が大きく変化するとともに、避難の長期化のなかで「戻れない不安」や「戻った不安」などが交じりあって、パニックを起こす事例も多く見受けられる。

このような状況のもと、2年目の活動としては新たに施設を整備し、発達障害児にたいして通常の療育に加えて、心・体ほぐし遊び(感覚統合訓練・心理療法含む)を実践するとともに、家族カウンセリングなどのトータル支援に取り組んでいく。応募団体の弛みなき活動に期待を寄せたい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 MMサポートセンター

特定非営利活動法人 こども福祉研究所

応募団体は、子どもと子育て家庭がいきいきと暮らせる社会づくりを目指して、子どもの権利擁護やひとり親家庭の自立などに取り組む東京の団体である。

助成1年目の主な活動は、岩手県山田町の子どもたちが安心して過ごせる居場所としての、学習支援スペース「おらーほ」の運営であった。そこでは毎日30名前後の子どもたちが集い、軽食を無料で提供しており、楽しい語らいの場ともなっている。また大人が中心であった併設の「街かどギャラリー」にも小学生が毎日15名前後集まるようになり、子どもを核とする地域交流が定着しつつある。

助成2年目も「おらーほ」と「街かどギャラリー」を継続して運営するが、子どもたちが運営に主体的に関われるような体制づくりによる事業内容のさらなる充実と、将来的な地元による自立した運営への助走を期待したい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 こども福祉研究所

くらしの再生:復興基盤整備

特定非営利活動法人 ワンファミリー仙台

路上生活者をはじめとする生活困窮者、社会的弱者などに対する住居支援・就業支援など社会復帰のための支援活動を仙台を中心に行ってきた応募団体は、震災直後からそのノウハウを活かして炊き出しなどさまざまな救援活動を実施してきた。

1年目の助成活動では、「仮設入居者への就労支援事業」として、企業訪問によって雇用先を開拓するとともに、(社)パーソナルサポートセンターの生活・就労相談事業と連携し、相談者のニーズに沿う形できめ細かく企業とのマッチングを展開し、一定の雇用実績をあげてきた。

助成2年目では、複合化した就労阻害要因を抱える求職者に対して、じっくりとヒアリングし、その状況や特性に応じた個別求人開拓により、いわばオーダーメイド型の就労支援を実施し生活再建に繋げようとしている。また、地元の中小企業向けには被災者雇用に対する助成金情報などを提供して雇用先を新規開拓したいとしている。地道できめ細かい就労支援が実を結ぶことを期待したい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 ワンファミリー仙台

特定非営利活動法人 中之作プロジェクト

応募団体は、福島県いわき市の江名・中之作および隣接エリアの被災した民家・街並みの保存や地域活性化事業を行うために、震災後に設立された。

助成1年目の「直してみんかプロジェクト」活動では、築200年といわれる古民家を市民参加型で修復して「清航館」として保存することを柱に、地域の風景・景観の保全に向けての情報発信やレンガ蔵など被災地域の貴重な建造物の発掘・調査に取り組んできた。

助成2年目では、「直してみんか・使ってみんかプロジェクト」の名が示すとおり、単なる修復・保存に終えることなく、清航館が「厨房付きレンタル古民家」として活用できるよう、障子張り、ふすま張り、土間三和土づくりなどの内装工事を市民参加で実施する。古民家修復を契機に、市民が主体的に参画して地域の景観や歴史的・文化的な財産を見つめ直すこの事業は、被災後の地域再生や新しいコミュニティづくりに寄与するものと期待される。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 中之作プロジェクト

特定非営利活動法人 土佐の森・救援隊

応募団体は、森林ボランティア活動を林業への入口と位置づけ、林業の間口を広げて地域雇用を増やし山村再生を図るための諸活動を高知県で展開し、実績をあげてきた。

助成1年目の活動は、岩手県大槌町、宮城県気仙沼市・南三陸町などの被災地で小規模自伐林業を復活・再生させるために林業技術研修会を定期開催しており、自伐林業組織が形成されつつある。また気仙沼市では、林業研修と木質バイオマスシステムの構築とを同時に進行させて、間伐材の買取システムも稼働するようになってきた。

助成2年目の活動では、石巻市などに支援対象地域を広げるとともに、林業と木質バイオマス利用をそれぞれの地域特性を見合った形で根付かせる取り組みに力を入れる。小規模ながらも、被災地での自律的な雇用創出と林業の復興につながる確かな一歩となることを願いたい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 土佐の森・救援隊

特定非営利活動法人 まきばフリースクール

応募団体は、宮城県栗原市で、不登校、ひきこもり、発達障害など生き辛さを抱える人々への自立支援をおこなってきた。

助成1年目の活動では、人口が激減した石巻市雄勝地域の仮設住宅に住む高齢者などの社会的弱者に対して、「暮らしの便利屋さん」として多彩できめ細かい生活再建支援を行い、「お茶っこサロン」を通して被災者の生の声に耳を向け、コミュニティの維持や孤立防止に努めてきた。

助成2年目の活動では、支援サービス内容は基本的に継続するが、生き辛さを抱える若者が自ら被災者と関わり、支援の担い手となるようなプログラム運営を展開する。応募団体のフリースクール事業における豊かな経験とノウハウが発揮され、被災者と若者との互恵的な関係が築かれることを願いたい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 まきばフリースクール

一般財団法人 たんぽぽの家

応募団体は、アートや文化の力を活かして、障害者や高齢者が安心して地域で暮らせるようになるための支援活動を長年にわたって奈良県で行ってきた。

助成1年目の活動は、宮城県山元町の社会福祉協議会をパートナーにして、心の拠り所としてのコミュニティスペース「カフェ地球村」を開設・運営した。また、そのカフェが基点となり、街の復興においても、障害のある人を含めた住民が主体的に参画する道筋が示された。

2年目の助成活動では、南三陸町の福祉作業所と共同し、障害のある人のアート活動やクラフト活動について質の高い事例を定着させ、障害者施設と地場産業によるアートを通した新事業を展開させようとしている。活動名「Good Job!」のとおり、先駆的な仕事開発の好事例が震災の地東北で生まれ、定着することを期待したい。

 団体概要・事業詳細:一般財団法人 たんぽぽの家