第1期第2回継続助成

第1期第2回継続助成(2013年10月01日から1年間)

2013年9月に終了した第2回新規助成先4団体(「いのち」2団体、「くらし」2団体)をすべて継続助成しました。「ふくしま30年プロジェクト」は、放射能測定を続けながら、子ども健康相談会を開催しました。「さんさんの会」は、仮設住宅の生活困窮者への配食から、食生活・健康管理の啓発など食を通じた健康支援に取り組みました。「福島県有機農業ネットワーク」は、東京に立ち上げたアンテナショップの経営の安定化と、福島県外の有機農業ネットワークとの交流を推進しました。「笑顔のお手伝い」は、被災外国人への日本語指導から、パソコン教室などの就労支援に活動を発展させました。

採択事業一覧

団体名 事業名 活動場所 助成額(万円)
 特定非営利活動法人 CRMS 市民放射能測定所 福島 (現:特定非営利活動法人 ふくしま30年プロジェクト) 福島県内での「こどもの健康相談会」および全国の避難者対象の健康相談会の開催と各地支援団体との連携 福島県 480
 特定非営利活動法人 さんさんの会 配食・見回り活動の継続と大船渡市民のための健康啓発プロジェクト 岩手県 745
 特定非営利活動法人 福島県有機農業ネットワーク 福島と東京をつなぐオルガン堂(オーガニック)、交流発展事業 東京都・福島県 624
 特定非営利活動法人 笑顔のお手伝い 外国人支援プロジェクト・就労支援移行事業(就労支援と日本語教室、パソコン教室、介護教室の運営・デイハウスの開催) 宮城県 588

概要

(※第4回新規助成・第2回継続助成を同時選考したため、両方をまとめて掲載しています)

第4回新規助成・第2回継続助成の選考を終えて – 求められる被災地支援の地道な継続!NPOの「組織基盤」「事業力」を高めて期待に応えよう!

選考結果の概要

今回は、2013年10月から始まる 第4回の新規助成と、2013年9月に終了する第2回助成に対する第2回継続助成について選考した。新規助成は、2012年4月から始まった第1回助成、2012年10月からの第2回助成、2013年4月からの第3回助成に続いての、第4回助成である。今回で2回目となる継続助成は、2013年3月に終了した第1回助成に対する第1回継続助成(2013年4月)に続くものである。テーマは、従来どおり「被災地にNPOの知恵と力を」で、部門は、<いのちの再生(人道支援)>と<くらしの再生(復興基盤支援)>の2つである。

選考結果を要約すると、新規助成では74件の応募の中から5件を選定し、継続助成では4件の応募の中から4件を選定した。因みに、継続助成の4件は、2013年9月に終了する第2回助成の4団体すべてが応募している。助成額でみると、新規助成は5 件2,922万円、継続助成は 4件2,437万円で、合計5,359万円となる。<いのち>と<くらし>の部門別では、新規は2件・3件、継続は2件・2件で全体では4件・5件と、ほぼバランスしている。以下、新規助成と継続助成について、その傾向や特徴を少し詳しく見てみよう。

新規助成について

新規については、2013年7月1日に公募を開始して7月12日を締切日とした。その結果、74件の公募があり、まず事務局を務める日本NPOセンターのスタッフ5名による予備選考を行った。各自が全ての応募書類を読み込み、選考基準に基づきABC評価をして意見交換したうえで、上位の評価となった40件(いのち18件、くらし22件)を選考考員会に提出した。

選考委員は、事前に届けられた40団体の応募書類を精読しABC評価して、8月28日の選考委員会に臨んだ。事務局は、各委員の評価結果をまとめた一覧表を作成し、選考委員会での検討資料として提供した。委員会では、選考基準である「社会的意義、「現地性」、「実現性」、「実施能力」の視点から40件の応募案件をひとつずつ審議・検討した。相当の時間をかけて白熱した議論が繰り広げられ、次第に絞り込まれていった。終盤では、甲乙つけがたい案件について委員による再投票で決めるという場面もあった。最終的に、6件が採択候補、2件が補欠候補と決まった。

この候補決定を受けて、日本NPOセンターのスタッフが2名1組で現地や団体を訪ねてインタビューした。委員会で出された確認事項や疑問点についてひとつひとつ質問する
とともに、申請団体のトップから話を伺うことや現場を見ることにより実施体制や計画の実現性についての認識を深めることができた。その結果は、9月6日に事務局から委員長に報告され、委員長決裁として助成先と助成金額が決定した。

助成プログラムの概要を簡単に報告すると、<いのち>の部門では、1.原発被災の福島における児童養護施設の子どもたちの健康管理。2.宮城県の「いのちの電話」を沿岸部の石巻にも開設する事業。<くらし>の部門では、1. 羊をブランド化して新たな産業・雇用を生み出す事業。2. 石巻の人たちが集い、活動をするためのコミュニティ・カフェ開設。 3.路上生活に陥りそうな生活困窮者に対する総合的な相談事業である。

継続助成について

今回で2回目となる継続助成の選考は、前回と同様に、これまでの活動報告を踏まえた応募内容のプレゼンテーションによる選考インタビューを8月6日に仙台で行った。そこには4団体が出席して、各団体から10分間のプレゼンがありその後に質疑応答タイムをとった。応募書類を丹念に読み込んできた選考委員からは、時には厳しい質問が寄せられることもあった。一方、控えめの応募金額ではその事業内容がしっかりと推進できるのかといった声が上がることもあった。プレゼン終了後に、選考委員は5段階評価をしたうえで審議に入り、各団体の応募書類やプレゼン内容をもとに活発な議論がなされた。発展の可能性が大きい案件は引き続き助成するという考え方から、いくつかの確認事項や助成金額を精査・再検討するなどの付帯条件つきで、全4件を継続助成することになった。その後事務局で必要な確認や調査を行い、9月6日に委員長決裁で助成金額を決定した。

助成プログラムの概要を記すと、<いのち>の部門では、1.福島県内での放射能防護に関する「こども健康相談会」の開催。 2.配食・見回り活動から始めた大船渡市内での健康啓発活動。<くらし>の部門では、1. 福島と東京をつなぐ有機農業のネットワークと交流事業。 2.外国人被災者支援ならびに就労支援事業。1年目の助成事業では、それぞれの課題を抱えながらも、地道な活動を行っており着実に実績をあげているといえよう。2年目の活動が、単なる継続ではなく、さらなる深化と新たな発展につながることを願いたい。

助成申請に見る新たな動き

地域別にみた応募状況では、東北ブロックは1,2回目の助成についてはそれぞれ47%,46%の応募があったが、3,4回目では東北が63%,61%と過半数を占めるようになってきている。これは、被災地の団体が着実に地域に根付いてきている証でもあるが、一方では、被災地から離れた地域での関心の「風化」が懸念される。新たな傾向の一つは、一般社団法人の存在感の高まりである。第4回助成の5団体のうち一般社団が2団体あり、法人格からみた応募状況でも、第3回助成では11%であったが第4回助成では22%となっている。一般・公益社団法人の今後の取り組みにも注目していきたい。

東日本大震災支援では阪神・淡路大震災を大きく上回る寄付が寄せられたが、その寄付の新しい形として注目されたのが被災者を応援するNPOの活動を支える「活動支援金」だった。その注目の理由は、なかなか配分されない義援金に比べ早く活用されやすいことだったが、「活動支援金」にはボランティアなどの参加を促すことで寄付の意味が増幅される「テコの効果」がある点も注目したい。そして、発災から2年半を経過した今、「活動支援金」のもう一つの特性も重要になる。それは長く活動を支えることで被災者主体の復興を後押しすることだ。この特性を踏まえ、本プログラムではNPOの「組織基盤」と「事業力」向上を後押しするよう考慮している。 今後も、多くの市民と協働し創造的に事業を進めるNPOの取り組みを引き続き応援していきたい。

タケダ・いのちとくらし再生プログラム
選考委員会委員長 早瀬 昇
(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 代表理事)

第2回継続助成 選考委員

いのちの再生:人道支援

特定非営利活動法人 CRMS市民放射能測定所 福島(現:特定非営利活動法人 ふくしま30年プロジェクト)

応募団体は、原発事故による放射能汚染の被曝量を低減するための総合的な支援活動を行うために発災後に設立された。

助成1年目の主な活動は、放射線防護のセカンドオピニオン的な立場で、食品測定ならびにホールボディカウンタ(以下WBC)測定を実施するとともに、「こども健康相談会」を福島県の内外で回開催してきた。

福島では、除染後の放射線量の再上昇や新たなホットスポットの出現が見られるなど、放射能汚染に対する不安は先行きが見えない。助成2年目は、子ども向けのWBC無料測定や食品・土壌などの放射線量測定は継続しつつも、ニーズの高い「こども健康相談会」の開催に重点を置いて活動を展開する。県内外で開催する「こども健康相談会」が、次代を担う子どもたちの将来にわたる健康の維持管理に寄与することを期待したい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 CRMS 市民放射能測定所 福島
(現:特定非営利活動法人 ふくしま30年プロジェクト)

特定非営利活動法人 さんさんの会

震災直後に岩手県大船渡市で地元有志が集まって始めた炊き出しをきっかけに設立された団体である。避難所での炊き出しから仮設住宅やみなし仮設住宅への支援に移行するなかで、高齢者を主な対象に見回り・見守りを兼ねた「おかず」の配食サービスを実施してきた。

助成1年目は、食の支援を必要とする約80名の生活困窮者に週3回の配食するとともに見守りの声かけ活動を実施してきた。その見回りでは、体調を崩している独居高齢者を発見して関係機関などと相談のうえ、適切な医療機関に繋いだという事例もあった。

2年目の助成活動では、従来からの配食・見回り活動を継続しつつ、食生活や健康管理に対する市民の意識向上に取り組み、併せて支援者の自立に向けてのサポートにも力を入れようとしている。「食」に特化した被災地支援活動から、「食」を通じた健康支援という福祉的な活動によって、地域社会に貢献することを期待したい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 さんさんの会

くらしの再生:復興基盤整備

特定非営利活動法人 福島県有機農業ネットワーク

福島県内の有機農業にかかわる農業関係者や消費者、研究者、行政などが連携し、有機農業の発展を目指すことを目的とする団体である。震災後、農産物の放射線測定をはじめ、農地除染のための講習会の開催、風評被害に抗していくための首都圏での農産物販売などに取り組んできた。

助成1年目では、風評被害を交流で克服するべく、首都圏でのチャレンジショップとして「ふくしまオルガン堂」を開設した。マスコミからも注目を集めて福島と首都圏の交流窓口となり、市民活動団体などとの幅広いネットワークも築かれつつある。助成2年目の活動では、「オルガン堂」の運営をしっかりと安定させるとともに、福島と首都圏の人々との交流をさらに深めようとしている。そのための取り組みである「オルガン堂女性の会」に注目したいし、また店舗の経営安定化だけでなく、交流の促進と幅広いネットワークづくりに向けて、さらに知恵と工夫を発揮されることを願っている。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 福島県有機農業ネットワーク

特定非営利活動法人 笑顔のお手伝い

震災以前から国際交流事業を通じて外国人妻の暮らしの問題に注目し、日本語教室の開催などによる支援活動を行ってきた団体である。農漁村部に嫁いできた外国人妻は、地域に溶け込めずにさまざまな問題を抱えている。

助成1年目の活動は、外国人被災者の実態調査や相談事業をはじめ、日本語教室や各種スキルアップ講座に取り組む支援活動を行ってきた。助成2年目では、これまでの日本語支援事業は継続するも、パソコン講座など就労支援や就に労体験事業に取り組む。このような事業展開が、外国人妻の具体的な就労に結びつくことを願っている。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 笑顔のお手伝い