第1期第4回新規助成

第1期第4回新規助成(2013年10月1日から1年間)

現地NPOの活躍が目立ってきました。福島の児童養護施設の子どもたちの健康管理、被災コミュニティの再生、就労支援に取り組む団体を助成しました。

採択事業一覧

団体名 事業名 活動場所 助成額(万円)
 特定非営利活動法人 福島県の児童養護施設の子どもの健康を考える会 福島県の児童養護施設の子どもと職員の健康状況の把握 福島県 570
 社会福祉法人 仙台いのちの電話 仙台いのちの電話石巻分室設置計画 宮城県 500
 一般社団法人 さとうみファーム 「羊」を使った被災地域の活性化と新規産業、雇用の創出を目指す活動 宮城県 520
 一般社団法人 コミュニティスペースうみねこ 高白浜ゆめハウスプロジェクト 宮城県 704
 特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ 「生活困窮者総合相談支援センター」の開設と運営 宮城県 628

概要

助成の趣旨

タケダ・いのちとくらし再生プログラムの一環として、東日本大震災で被災された方々の「いのち」と「くらし」の再生を願い、武田薬品工業株式会社からのご寄付をもとに、被災3県(岩手、宮城、福島県)において活動する民間の支援活動に対して助成を行っています。第1回の助成では2012年4月から13団体(いのちの再生で6件、くらしの再生で7件)、第2回の助成では2012年10月から4団体(いのちの再生で2件、くらしの再生で2件)、第3回の助成では2013年4月から8団体(いのちの再生で4件、くらしの再生で4件)、および第1回の継続助成では2013年4月から7団体と、累計32件(団体数25団体)の助成を行ってきました。

応募資格

「いのち」と「くらし」の再生に関わる社会的課題を発掘し、その課題を解決するために被災3県において活動する非営利の組織とします。法人格の有無や種類は問いません。ただし、政治的・宗教的な組織は対象としません。

なお医療関係者等の団体による応募については、後述の選考委員会が応募団体を当該団体と判断した場合、寄付金拠出者(武田薬品工業株式会社)に利益をもたらす可能性を排除するために、選考委員会での当該団体を対象とした選定過程において寄付金拠出者は一切関与しません。

さらに、選考委員会が当該団体を助成対象に選考した場合、医薬品業界内ルールおよび寄付金拠出者の制定する規定(透明性ガイドライン)などに照らし、当該団体は当該団体名の公開について寄付金拠出者と同意することをもって、決定とさせていただきます。同意いただけない場合は、選考結果を取り消させていただきますことをご留意ください。

対象経費

応募活動に関わる必要経費(支出項目は特に定めません。運営費や人件費も含むことができます)

助成限度額

助成1件につき500万円〜1,000万円(総額3,000万円を予定)

対象となる活動

いのちの再生
人道支援の視点から、社会的に弱い立場にある被災者(子ども、高齢者、病人、障害者、災害遺児・遺族、経済的困窮者等)が尊厳をもって生きていけるよう、その人権を尊重し、日常生活を支援し、保健・医療・福祉の充実を図る活動。
くらしの再生
復興にむけた基盤整備支援の視点から、被災した人々が生きがいのある暮らしを回復で きるよう、生活の場・仕事の場を再建し、生活基盤を整備する活動。なお、これらの活動に関わる調査研究や政策提言活動も対象とします。

応募期間

2013年10月1日から1年間(毎年度の選考によって必要と認めた場合には継続助成の可能性があります)

選考方法

「いのちとくらし再生委員会」内に設置する選考委員会にて、選考を行い決定します。選考過程で、必要に応じて関連資料を提出して頂いたり、応募団体にインタビュー等を行います。

選考基準

下記の点で高く評価されたものを選考します。

  • ア)社会的意義:本プログラムで定める対象活動としての社会的意義が大きい。
  • イ)現地性:被災者のニーズをよく把握し、地元の団体と連携がとれている。
  • ウ)実現性:実施体制・スケジュール・予算等が適切で活動の実現性が高い。
  • エ)実施能力:応募団体には、応募内容を実施するに十分な組織基盤や活動実績がある。

応募状況

応募総数は74件で、前回の98件と比べると75%となった。テーマは、いのちが30件、くらしが44件、地域分布は、被災地三県(岩手、宮城、福島)からが44件(59%)となり、前回の63%に比べると若干減っている。県別では、宮城県23、福島県12、岩手県9となり、福島県が半減した。全国的には東京都(16件)以外、数件にとどまった。応募総額は5億2,326万円、平均応募額は707万円となり、これまでより応募額も減っている。法人の傾向は、NPO法人が39件(53%)、それについで任意団体(16件 22%)、一般社団法人(16件 22%)の順となる。

各分類別状況

都道府県別に見た応募状況

※応募があった都道府県のみ記載

ブロック 都道府県 件数
東北 青森 1
岩手 9
宮城 23
福島 12
関東 埼玉 2
千葉 4
東京 16
神奈川 3
東海 愛知 2
近畿 兵庫 1
九州・沖縄 宮崎 1

被災地3県からの応募状況

県名 市町村 件数
岩手県(9件) 盛岡市 3
釜石市 1
宮古市 1
一関市 2
陸前高田市 3
宮城県(23件) 仙台市 9
利府町 1
石巻市 7
南三陸町 1
大崎市 2
女川町 1
気仙沼市 1
富谷町 1
福島県(25件) 福島市 5
郡山市 1
いわき市 2
会津若松市 2
相馬市 1
南会津町 1

法人格から見た状況

法人格 件数
公益社団法人 1
一般社団法人 16
特定非営利活動法人 35
認定特定非営利活動法人 4
社会福祉法人 1
学校法人 1
任意団体 16

(※第4回新規助成・第2回継続助成を同時選考したため、両方をまとめて掲載しています)

第4回新規助成・第2回継続助成の選考を終えて
求められる被災地支援の地道な継続!
NPOの「組織基盤」「事業力」を高めて期待に応えよう!

タケダ・いのちとくらし再生プログラム
選考委員会委員長  早瀬 昇
(認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 代表理事)

選考結果の概要

今回は、2013年10月から始まる 第4回の新規助成と、2013年9月に終了する第2回助成に対する第2回継続助成について選考した。新規助成は、2012年4月から始まった第1回助成、2012年10月からの第2回助成、2013年4月からの第3回助成に続いての、第4回助成である。今回で2回目となる継続助成は、2013年3月に終了した第1回助成に対する第1回継続助成(2013年4月)に続くものである。テーマは、従来どおり「被災地にNPOの知恵と力を」で、部門は、<いのちの再生(人道支援)>と<くらしの再生(復興基盤支援)>の2つである。

選考結果を要約すると、新規助成では74件の応募の中から5件を選定し、継続助成では4件の応募の中から4件を選定した。因みに、継続助成の4件は、2013年9月に終了する第2回助成の4団体すべてが応募している。助成額でみると、新規助成は5 件2,922万円、継続助成は 4件2,437万円で、合計5,359万円となる。<いのち>と<くらし>の部門別では、新規は2件・3件、継続は2件・2件で全体では4件・5件と、ほぼバランスしている。以下、新規助成と継続助成について、その傾向や特徴を少し詳しく見てみよう。

新規助成について

新規については、2013年7月1日に公募を開始して7月12日を締切日とした。その結果、74件の公募があり、まず事務局を務める日本NPOセンターのスタッフ5名による予備選考を行った。各自が全ての応募書類を読み込み、選考基準に基づきABC評価をして意見交換したうえで、上位の評価となった40件(いのち18件、くらし22件)を選考考員会に提出した。

選考委員は、事前に届けられた40団体の応募書類を精読しABC評価して、8月28日の選考委員会に臨んだ。事務局は、各委員の評価結果をまとめた一覧表を作成し、選考委員会での検討資料として提供した。委員会では、選考基準である「社会的意義、「現地性」、「実現性」、「実施能力」の視点から40件の応募案件をひとつずつ審議・検討した。相当の時間をかけて白熱した議論が繰り広げられ、次第に絞り込まれていった。終盤では、甲乙つけがたい案件について委員による再投票で決めるという場面もあった。最終的に、6件が採択候補、2件が補欠候補と決まった。

この候補決定を受けて、日本NPOセンターのスタッフが2名1組で現地や団体を訪ねてインタビューした。委員会で出された確認事項や疑問点についてひとつひとつ質問する
とともに、申請団体のトップから話を伺うことや現場を見ることにより実施体制や計画の実現性についての認識を深めることができた。その結果は、9月6日に事務局から委員長に報告され、委員長決裁として助成先と助成金額が決定した。

助成プログラムの概要を簡単に報告すると、<いのち>の部門では、1.原発被災の福島における児童養護施設の子どもたちの健康管理。2.宮城県の「いのちの電話」を沿岸部の石巻にも開設する事業。<くらし>の部門では、1. 羊をブランド化して新たな産業・雇用を生み出す事業。2. 石巻の人たちが集い、活動をするためのコミュニティ・カフェ開設。 3.路上生活に陥りそうな生活困窮者に対する総合的な相談事業である。

継続助成について

今回で2回目となる継続助成の選考は、前回と同様に、これまでの活動報告を踏まえた応募内容のプレゼンテーションによる選考インタビューを8月6日に仙台で行った。そこには4団体が出席して、各団体から10分間のプレゼンがありその後に質疑応答タイムをとった。応募書類を丹念に読み込んできた選考委員からは、時には厳しい質問が寄せられることもあった。一方、控えめの応募金額ではその事業内容がしっかりと推進できるのかといった声が上がることもあった。プレゼン終了後に、選考委員は5段階評価をしたうえで審議に入り、各団体の応募書類やプレゼン内容をもとに活発な議論がなされた。発展の可能性が大きい案件は引き続き助成するという考え方から、いくつかの確認事項や助成金額を精査・再検討するなどの付帯条件つきで、全4件を継続助成することになった。その後事務局で必要な確認や調査を行い、9月6日に委員長決裁で助成金額を決定した。

助成プログラムの概要を記すと、<いのち>の部門では、1.福島県内での放射能防護に関する「こども健康相談会」の開催。 2.配食・見回り活動から始めた大船渡市内での健康啓発活動。<くらし>の部門では、1. 福島と東京をつなぐ有機農業のネットワークと交流事業。 2.外国人被災者支援ならびに就労支援事業。1年目の助成事業では、それぞれの課題を抱えながらも、地道な活動を行っており着実に実績をあげているといえよう。2年目の活動が、単なる継続ではなく、さらなる深化と新たな発展につながることを願いたい。

助成申請に見る新たな動き

地域別にみた応募状況では、東北ブロックは1,2回目の助成についてはそれぞれ47%,46%の応募があったが、3,4回目では東北が63%,61%と過半数を占めるようになってきている。これは、被災地の団体が着実に地域に根付いてきている証でもあるが、一方では、被災地から離れた地域での関心の「風化」が懸念される。新たな傾向の一つは、一般社団法人の存在感の高まりである。第4回助成の5団体のうち一般社団が2団体あり、法人格からみた応募状況でも、第3回助成では11%であったが第4回助成では22%となっている。一般・公益社団法人の今後の取り組みにも注目していきたい。

東日本大震災支援では阪神・淡路大震災を大きく上回る寄付が寄せられたが、その寄付の新しい形として注目されたのが被災者を応援するNPOの活動を支える「活動支援金」だった。その注目の理由は、なかなか配分されない義援金に比べ早く活用されやすいことだったが、「活動支援金」にはボランティアなどの参加を促すことで寄付の意味が増幅される「テコの効果」がある点も注目したい。そして、発災から2年半を経過した今、「活動支援金」のもう一つの特性も重要になる。それは長く活動を支えることで被災者主体の復興を後押しすることだ。この特性を踏まえ、本プログラムではNPOの「組織基盤」と「事業力」向上を後押しするよう考慮している。 今後も、多くの市民と協働し創造的に事業を進めるNPOの取り組みを引き続き応援していきたい。

第4回新規助成 選考委員一覧

いのちの再生:人道支援

特定非営利活動法人 福島県の児童養護施設の子どもの健康を考える会

応募団体は、福島県内の児童養護施設の子どもたちを対象に、低線量被曝の最小限化と健康状況の把握を行い、健康被害の早期発見と早期治療により包括的な健康管理事業に取り組んでいる。県内の児童養護施設は8つで、2013年8月現在4つの児童養護施設において内部被曝モニタリングのために、同意の得た職員のべ68名、子どものべ54名を対象に尿中セシウム検査を実施している。

さまざまな事情(被虐待、親が病気療養中、子ども自身が発達障害など)により児童養護施設に入所している子どもたちは社会的弱者で、自らの健康を自ら守ることが困難な状況にある。

今回の助成事業が、このような子どもたちが長期にわたる低線量被曝による影響をできるかぎり抑えるための環境づくりとなることを期待したい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 福島県の児童養護施設の子どもの健康を考える会

社会福祉法人 仙台いのちの電話

応募団体は、精神的な危機に直面して助けと励ましを求めている人々に電話という手段で対話し、健全な社会生活ができるように援助し、社会福祉の増進に寄与しようとしている組織である。その活動は30余年の歴史があり、1年365日24時間の電話対応を地道に続けている。電話相談総数は年間約25,000件で、そのうち自殺傾向のある相談は受信件数の10%余りを占めている。

東日本大震災による津波で大きな被害を受けた石巻地域など沿岸部では、人々の心の健康を回復・向上させることが今なお大きな課題である。今回の助成では、「仙台いのちの電話」の石巻分室が開設されることにより、被災地域周辺の相談員による被災地に根付いた心のケアが展開されることを期待したい。

 団体概要・事業詳細:社会福祉法人 仙台いのちの電話

くらしの再生:復興基盤整備

一般社団法人 さとうみファーム

応募団体は、南三陸町で農林水産業の発展と雇用、新規産業の創出など地域経済の振興に取り組んでいる社団法人である。震災復興支援では、前身の任意団体の頃から、コミュニティ広場の再建、漁業支援、子ども向けイベントの実施などに取り組み、多くの地域住民との繋がりを深めてきている。

今回の助成事業は、「羊」をキーワードに、わかめ養殖の水産業も含む1次産業から3次産業までを巻き込んだ新規産業づくりと雇用創出事業である。いわゆる「6次産業」である。このプログラムには、塩害農地でも栽培できるソルトブッシュやわかめ残滓を飼料に有効活用するなど、チャレンジングで環境に配慮した側面もある。多くの人に親しまれ心を和ませる「羊」のように、助成事業によって南三陸のまちが明るく元気に活性化されることを期待したい。

 団体概要・事業詳細:一般社団法人 さとうみファーム

一般社団法人 コミュニティスペースうみねこ

応募団体は、震災直後に避難所の子守活動や仮設住宅での物資配給や炊き出しから活動を始め、仮設での生きがいづくりと経済的な自立を目指して布草履の制作・販売にも取り組んできた。震災前に比べて人口が半減し高齢者の割合も高くなった女川町では、被災者も高齢者も男女を問わず各々の力を発揮できるようなコミュニティ再生が求められている。

今回の助成事業は、高白浜に残った建物(倉庫)をきちんと修復・整備して食品加工とカフェの場「ゆめハウス」として再利用するとともに、その素材・食材づくりとして「果樹園」を整備しようとするプログラムである。地元の多くの人たちがその経験と能力を農・工・サービスそれぞれ相応しい分野で活かして、まち復興の「ゆめ」を切り拓いていくことを期待したい。

 団体概要・事業詳細:一般社団法人 コミュニティスペースうみねこ

特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ

応募団体は、2000年から仙台市内で路上生活者支援活動を始めて、現在では路上生活者と生活困窮者の自立に向けての包括的な支援を実施している。特に震災後は、炊き出し・物資提供・仮設住宅入居支援など多彩な被災者支援活動を実施してきた。

今回の助成事業は、ホームレス支援事業の域を越えて、生活困窮者全般に支援対象を広げ、さまざまな生活相談にきめ細かく対応するという内容である。つまり、生活困窮という社会の荒波のなかで、ホームレス化を未然に防ぐための防波堤の役割を果たそうとするものである。これまで培ってきた行政や関係諸団体との協力・連携体制を活かして、幅広く展開される社会的弱者への相談支援事業が、彼/彼女たちの生活の自立に繋がることを願いたい。

 団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ