第1期第6回継続助成

第1期第6回継続助成(2015年10月01日から1年間)

第1期助成事業としては最後の助成として宮城県の5団体を継続助成しました。今回は、被災地における生活困窮者や被災者の就労支援、そして高齢者や女性の生きがいづくりや被災地域の活性化と結びつけた新たな雇用創出支援を継続助成しました。震災から5年が経過しましたが、継続助成を経て助成先団体は、課題をもちつつも力強く活動を推進しています。助成先団体間の交流も進み、具体的に連携、協働による活動に発展するケースも出てきました。タケダいのちとくらし再生プログラムは、新しい視点で助成や、現地NPOの組織基盤強化を支援する事業を第2期として展開することで、引き続き東北被災地の復興を現地NPOと共に支援していきます。

採択事業一覧

団体名 事業名 活動場所 助成額(万円)
 特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ 「HELP!みやぎ」相談・フォローアップ継続、中間就労事業継続・発展、新規雇用創出事業継続・発展 宮城県 595
 一般社団法人 長面浦海人 長面浦さとうら再生計画 -はまなすカフェからの挑戦 宮城県 370
 一般社団法人 ワタママスマイル 被災者の就労支援と地域への配食サービス・高齢者見守り支援事業 宮城県 675
 一般社団法人 コミュニティスペースうみねこ 生きがいから雇用へ(ゆめハウスからの広がり)プロジェクト 宮城県 564
 一般社団法人 さとうみファーム 観光羊牧場を核とした被災地域の活性と雇用創出を目指す活動 宮城県 600

概要

第6回継続助成の選考を終えて-
これからも求められる、復興期の被災地支援を!

タケダ・いのちとくらし再生プログラム
選考委員会委員長 早瀬 昇
(認定特定非営利活動法人日本NPO センター 代表理事)

今回は、2015年10月から始まる第6回継続助成について選考した。この第6回継続助成は、タケダ・いのちとくらし再生プログラム(第1期事業)としての最終回の助成である。本プログラムの助成事業では、継続助成に2回まで応募できる。また、助成期間の延長も認めているので、必ずしも直近の助成事業から継ぎ目なく応募されるわけでもないので、今回の応募には、第5回新規、第4回継続のそれぞれに助成をした団体からの応募があった。テーマは、新規助成と同様に「被災地にNPOの知恵と力を」で、〈いのちの再生(人道支援)〉と〈くらしの再生(復興基盤支援)〉の2部門である。実際に,応募があったのは<いのちの再生>1団体と<くらしの再生>5団体であった。

継続助成については、これまでの事業の成果と課題を踏まえた形で応募事業のプレゼンテーションによる選考を行っている。今回は2015年8月31日(月)に仙台で行った。応募の各団体から10分間のプレゼンテーションがあり、その後、選考委員による8分間の質疑応答を行った。選考委員は、継続助成団体のこれまでの事業内容をよく承知していることもあり、具体的でかなり突っ込んだ質問も寄せられた。プレゼンテーション終了後、選考委員は4つの評価基準(実績評価、発展・展開性、実現性、予算の妥当性)についての5段階評価に基づいて総合評価をして、選考審議を行った。これまでの活動実績を踏まえて、今回の応募がさらに活動を深め発展させる内容になっているか、また変化してきている地域ニーズに対応しているかなどを検討するとともに、活動予算の妥当性についても議論した。その結果、6件のうち5件を助成することを決定した。その後、事務局にて追加的な確認や調査を経て、9月7日に委員長決裁により助成額を決定した。助成額は全体で5件2、804万円となる。部門別では、<いのちの再生>が1件595万円で,<くらしの再生>が4件2,209万円となった。

助成が決定した事業の概要は、<いのちの再生>では、1. ホームレスや生活困窮者向けの中間就労支援事業(宮城県)、<くらしの再生>では、2. 被災者の就労支援と地域への配食サービス・高齢者見守り支援事業(宮城県)、3. コミュニティスペースを活用した生きがいづくりから雇用へと広げるプロジェクト(宮城県)、4. 観光羊牧場を核とする被災地の活性化と雇用創出(宮城県)、5. 津波で大きな被害を受けた長面浦の「番屋(はまなすカフェ)」による再生計画(宮城県)である。県別では、全て宮城県であった。

今回の特色は、被災地における生活困窮者や被災者の就労支援、そして高齢者の生きがいづくりや被災地の活性化と結びつけた新たな雇用創出事業にある。「番屋」カフェも高齢者・女性の生きがい創出と地域の活力形成である。これらに共通するのは、復興に取り残されがちな人たちへの支援であり、また地域コミュニティの再生に向けて事業展開と雇用づくりである。

本プログラムでは、第1期としては継続助成の最終回である。東日本大震災からの本格的な復興には、長期間の支援が求められている。そこで、武田薬品工業と日本NPOセンターでは、これからも復興支援を継続して実施するために、次なる5年間を「第2期事業」として位置づけて具体的なプログラムを企画立案中である。今後も、みなさまともに復興支援に取り組んでいきたい。

くらしの再生(復興基盤支援)

特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ

「HELP!みやぎ」相談・フォローアップ継続、中間就労事業継続・発展、新規雇用創出事業継続・発展

応募団体は、2000年から仙台市内で路上生活者の支援活動を開始し、震災後は、これに加えて炊き出しや物資提供・仮設住宅への入居支援など、総合的な被災者支援活動を実施してきた。助成1年目は、これまでの路上生活者の支援を拡大し、生活困窮者自立支援を主たる目的として、相談センター「HELP!みやぎー生活困窮者ほっとライン」を開設することで、相談から同行支援やアフターフォローまでを行った。継続助成2年目は、相談センターでは年間1,000人の相談をうけ、就労にむけたトレーニングとなる中間就労事業でも有給スタッフへの雇用などの成果が見られた。継続助成3年目となる今回は、前回から着手したフードファーム事業の発展に取り組む。提携農場での中間就労の場を維持しながら、独自農園を開設し、就農者育成と、作物の配食サービス提供をめざしている。震災から4年半が経過し、厳しさの増す状況の中、弱い立場にある人々の自立を支える団体への期待は大きい。

団体概要・事業詳細:特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ

一般社団法人 長面浦海人

長面浦さとうら再生計画 -はまなすカフェからの挑戦

応募団体は、津波で壊滅的な被害を受けた石巻市北上河口域の内海・長面浦(ながつらうら)を再生しようと、地元の漁師たちが中心になって、2013年9月に立ち上げた組織である。以来、専門家とともに復興への道筋を毎月話し合い、番屋建設、情報発信強化、交流の拡大などを柱に漁業の立て直しと漁師の手による地域復興の方針を固め、「長面浦さとうら再生計画」を立ててきた。初回助成では、番屋を拠点としたコミュニティ構築、特産物である牡蠣の普及宣伝、「長面浦はまなすカフェ」の開設と運営に取り組んだ。継続助成となる今回は、カフェを通じた大川地区の住民の交流促進、体験型牡蠣オーナー制度の確立、震災伝承の記録づくりなど、地域内外での一層の深化を目指す。今後とも様々な連携を深め、長面浦のファンを増やしていくことに期待している。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 長面浦海人

一般社団法人 ワタママスマイル

被災者の就労支援と地域への配食サービス・高齢者見守り支援事業

応募団体は、青年海外協力隊のOB・OGによって組織された「協力隊OV有志による震災支援の会」として発足した。助成1年目は、配食事業の新たな拠点「ワタママ食堂」の開設を行い、地域の女性たちの就労を支援してきた。同時に地元スタッフが中心となる今後の活動の土台づくりにも取り組み、新たに「ワタママスマイル」という一般社団法人を設立した。継続助成2年目は、配食対象を工事関係者等に広げて採算ラインを超える発注数を確保した。また、店舗を活用して地域交流イベントなどを実施して地域の関連団体との連携を深めたり、高齢者へのお弁当配食を通した見守り活動を実施してきた。継続助成3年目となる今回は、復興工事終了後の顧客確保も見据えて、栄養バランスや塩分、カロリー等が管理された献立の開発や、生活困窮家庭の子ども達への「こども食堂」、地域の食のサポーターとしての取り組みを深めていく計画である。地元女性の就労支援から始まった活動が、地域に根ざし、広がりをもった活動として定着していくことを応援していきたい。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 ワタママスマイル

一般社団法人 コミュニティスペースうみねこ

生きがいから雇用へ(ゆめハウスからの広がり)プロジェクト

応募団体は、震災前に比べて人口が半減した女川町において、コミュニティの再生に取り組んできた。助成1年目は、女川町高白浜地区に唯一残った倉庫を修復・整備し、食品加工場兼カフェ「ゆめハウス」として再利用するとともに、その素材・食材づくりとして隣接する果樹園と農園を整備した。継続助成の2年目は、地域のコミュニティスペースとして「ゆめハウス」の来訪者を増やし、高齢者の雇用創出を目指した果樹園(いちじく)と農園(にんにく、唐辛子)からの産品を原料とした新規特産物の開発に取り組んだ。「女川とうがらし」と名づけた唐辛子は人気商品となり、安定した顧客を獲得しつつある。事業の広がりにあわせて若手スタッフの雇用も行い、高齢者と若手がお互いの得意分野を活かした活動を展開している。継続助成3年目となる今回は、地域のさまざまな団体と連携しながら、各プロジェクトの更なる深化を目指していく。地域の住民が様々な形で事業に参画して、プロジェクトが他地域にもモデルとして広がることを期待している。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 コミュニティスペースうみねこ

一般社団法人 さとうみファーム

観光羊牧場を核とした被災地域の活性と雇用創出を目指す活動

応募団体は、南三陸町のわかめ残渣を活用した飼料を与えた羊を飼育、出荷するだけではなく、観光牧場として開放することで、廃棄わかめという地域の課題解決と、南三陸に新たな観光産業を興すことに取り組んでいる。助成1年目は、牧場を開拓して羊を飼育し、ブランド羊肉として出荷した。継続助成の2年目は、BBQ広場を開設するとともにカヤック体験ツアーをスタートさせて、観光牧場としての魅力向上に取り組んだ。継続助成3年目となる今回は、わかめ発酵資料を量産化し、飼料として出荷することで、廃棄わかめの更なる有効活用を目指す。また、地域行政、教育機関、諸団体と連携した地域活性化を深化させていく。観光牧場を軌道に乗せていくためには乗り越えなければならない課題もあるが、幅広い連携先との協働により、南三陸の新たなコミュニティ形成がさらに前進することを期待する。

団体概要・事業詳細:一般社団法人 さとうみファーム