第2期第3回新規助成(2018年10月1日〜2019年9月30日)
このたび、「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」第2期第3回助成(助成期間2018年10月~2019年9月)の選考を行い、以下の通り決定しましたので、お知らせします。
採択事業一覧
団体名 | 事業名 | 活動場所 | 助成額(万円) |
---|---|---|---|
認定特定非営利活動法人 心の架け橋いわて | 被災地コミュニティにおける支援団体間の連携・協働によるメンタルヘルスケアの強化 | 岩手県大槌町および周辺地域 | 398 |
特定非営利活動法人 りくカフェ | はまって、かだって 生涯現役(参加して、おしゃべりして) | 岩手県陸前高田市及び近隣市町村 | 400 |
一般社団法人 雄勝花物語 | コミュニティカフェ等を活用した交流人口拡大事業 | 宮城県石巻市雄勝町 | 500 |
認定特定非営利活動法人 市民公益活動パートナーズ | 新旧町内会・復興住宅自治会の連携により住民自らが創る、新たなコミュニティ創出モデル事業 | 福島県福島市 | 440 |
概要
助成の趣旨
東日本大震災から7年が経過した被災地では、仮設住宅から復興公営住宅への移転に伴い社会的課題が顕在化するなど、復興にはまだまだ支援が必要な状況が続いています。一方で、外部支援者の撤退が増加するなど支援のための資源が減少しており、現地のNPOと住民の役割にますます期待がよせられています。
そこで「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」第2期の助成事業では、被災3県に本部を置くNPOが、1. 現地で様々な強みを持って活動している支援の担い手の力を結集して被災地の課題に取り組む事業と、2. 住民の主体的な参加を通じて現在の被災地の課題に取り組む事業を助成します。
助成金額と助成期間
助成1件につき300万円〜500万円(総額2,000万円を予定)
2018年10月1日から2019年9月30日までの1年間
助成対象となる活動
岩手県、宮城県、福島県の東日本大震災の被災地において、「いのち」と「くらし」の再生(下欄参照)に関わる支援活動のうち、特に以下の方法をもって取り組む事業を助成対象とします。
A. 連携・協働
自治会などの地縁組織、社会福祉協議会、企業、行政、他のNPOなど複数の支援の担い手と連携・協働し、被災地域の課題に取り組む活動。各団体が持つ強み、専門性を結集することで、ひとつの団体だけでは解決できない課題に取り組んだり、活動の成果が広域に波及することを目指す事業。
B. 住民のエンパワメント
社会的な孤立、生活困窮など、震災から6年を経て顕在化してきた被災地域の課題に住民の主体的な参加を通じて取り組む活動。NPOなどによるこれまでの活動の経験を生かし、住民自らが被災地域の課題を解決していくことを目指す事業。
- 「いのち」の再生:
- 社会的に弱い立場にある被災者(子ども、高齢者、病人、障害者、災害遺児・遺族、生活困窮者等)が尊厳をもって生きていけるよう、その人権を尊重し、日常生活を支援し、保健・医療・福祉の充実を図る活動。
- 「くらし」の再生:
- 被災した人々が生きがいのある暮らしを回復できるよう、生活の場・仕事の場を再建し、生活基盤を整備する活動。
応募期間
2018年6月18日(月)〜6月29日(金)
応募の傾向
応募総数は35件(34団体)で、団体所在地の地域分布としては、岩手県7件(20%)、宮城県12件(34%)、福島県15件(46%)となった。応募総額は1億5,000万円、平均応募額は429万円であった。
「A. 連携・協働」「B. 住民のエンパワメント」のテーマ別では、Aが10件(29%)、Bが25件(71%)とBがAの2.5倍の応募数となり、昨年度と同様の傾向であった。
法人の傾向としては、NPO法人が21件(62%)と最も多く、それについで任意団体8件(24%)、一般社団法人4件(12%)、の順となる。設立時期では、2011年3月以後に設立された団体が26件(76%)を占めた。
カテゴリー別応募状況
県・市町村別に見た応募状況
県名 | 市町村 | 件数 |
---|---|---|
岩手県(7件) | 盛岡市 | 2 |
宮古市 | 1 | |
陸前高田市 | 2 | |
大槌町 | 2 | |
宮城県(12件) | 仙台市 | 3 |
石巻市 | 5 | |
気仙沼市 | 1 | |
山元町 | 1 | |
南三陸町 | 2 | |
福島県(15件) | 福島市 | 6 |
南相馬市 | 3 | |
郡山市 | 1 | |
いわき市 | 3 | |
二本松市 | 2 |
法人格から見た状況
法人格 | 件数 |
---|---|
特定非営利活動法人 | 21 |
任意団体 | 8 |
一般社団法人 | 4 |
その他法人 | 1 |
第2期第3回助成の選考を終えて
選考委員長 大島 誠
東日本大震災から7年半の時が過ぎました。忘れてはならない大惨事であったはずなのに、日常生活の中では震災を意識することが少なくなってしまいました。そして震災を伝えるテレビや新聞の報道に触れた時、思い出したように背筋が伸びるのです。
日本NPOセンターで震災関連の事業に関わらせていただき、時々現地を視察させていただきます。海岸には驚くほど高く大きな防潮堤が創られ、山を切り崩した高台には新しい団地が整備されています。また、かつて海岸で在った付近には真新しいフィッシャーマンズワーフが整備され、週末ともなると大勢の観光客らで賑わっています。そして海岸から遠く離れた街中には災害復興公営住宅が何棟も立ち並び、人々の新しい生活が始まっています。目に見える物理的な復興は手法や形状への賛否はともあれ、進んできているように思います。しかし「タケダいのちとくらし再生プログラム」の選考に関わらせていただき、真の復興とは何かを深く考えさせられました。震災の惨事で負った心の傷の表面化、また復興の過程で両親や家族から本来受けるべき愛情やぬくもりの不足が生む情緒の不安定、仮設住宅さらには復興住宅への移住が産み出した高齢者の孤立化・生きがいの喪失感、従来の町内会と復興住宅自治会との関係性の齟齬、子どもや障がい者や高齢者などの社会的弱者への配慮の不足による新たな社会問題の発生など、震災から時間が経つにつれて、または復興の活動そのものが産み出した問題への対応が急務となっているのです。正に「いのちとくらしの再生」の為の活動が今こそ、いや今から必要なのだと痛感しました。そしてこの活動には、幅広い分野の専門家の協力と長期にわたる取組が必要なケースが多く、団体同士や地域の人々との連携が不可欠であると教えられました。
第2期第3回の選考には35件の応募がありました。総ての申請団体から取組んでいる課題の存在とその活動の重要性についても学ばせていただきました。予算には限りがあり総ての団体への支援は叶いませんでしたが、4団体を採択し、助成額は、1,738万円となりました。採択された4団体には、是非とも長期的な視点で活動を続けて頂き、被災地域の「いのちとくらしの再生」にご尽力ください。期待しています。
A. 連携・協働
認定特定非営利活動法人 心の架け橋いわて
被災地コミュニティにおける支援団体間の連携・協働によるメンタルヘルスケアの強化
認定特定非営利活動法人心の架け橋いわては、さまざまな職種のメンタルヘルスケアチームが遠隔地から現地に赴くかたちで支援を行ってきた。2014年以降、岩手県内での支援者育成に努め、地域自立型の支援との相補的活動に移行しつつある。今回は、遠隔地からのメンタルヘルス専門家、岩手県在住の支援者、現地支援団体との連携協働により、被災者への訪問サービスや予防的啓発教育を提供する。それらを通じて、疾病予防と居場所づくりに資する新たな地域メンタルヘルス支援モデルを提示して実践することを目指している。現地支援団体は、住民主体のまちづくり、高齢者支援、社会的引きこもりや障害を持つ方々への支援など多岐にわたり、さらに、宮城県や福島県のメンタルヘルス支援団体とも協働研修会などを行う。復興が進む中、メンタルヘルスへの取り組みは今後も必要であり、医療過疎地でのセーフティネット、精神医療に関する理解促進にもつながることを期待したい。
団体概要・事業詳細:認定特定非営利活動法人 心の架け橋いわて
特定非営利活動法人 りくカフェ
はまって、かだって 生涯現役(参加して、おしゃべりして)
特定非営利活動法人りくカフェは、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市で地元のママ友が集い、仮設住宅や復興住宅などのコミュニティスペースでカフェなどのサロン活動を継続してきた。今回の応募では、脳卒中死亡率や糖尿病予備軍率、中高年の肥満率がワースト1という地域課題に対して、「食育」「介護予防」をテーマに料理教室や健康ランチの提供、介護予防講座を定期的に実践するというものである。震災の影響によりますます重要となる地域コミュニティの活性化と、何より、被災者一人ひとりがこれからも健康で暮らすための励みとなることに寄与するものである。また、こうした取り組みが一過性に終わらないよう、市からは市域を俯瞰した助言に加え、同市社協から地域課題、同市復興支援連絡会から個別復興住宅団地の情報を共有し、連携した活動をめざしている。「地域のお母さん」の立場から、引き続き被災者を丁寧に見守っていただくことを期待している。
B. 住民のエンパワメント
一般社団法人 雄勝花物語
コミュニティカフェ等を活用した交流人口拡大事業
一般社団法人雄勝花物語は、東日本大震災で甚大な被害を受け人口が激減している石巻市雄勝町において、行政や地域組織と連携した住民によるボトムアップ型の地域コミュニティ活動を通じて、持続可能なまちづくりを行っている。今回の応募では、町唯一のコミュニティカフェが閉鎖してしまった中、地域住民からの「集う場所」の要望に応えるため、雄勝花物語が運営する「雄勝ローズファクトリーガーデン」という年間8,000人が行き交う施設内に、コミュニティカフェを開設しようとするものである。コミュニティカフェの運営を通じて、地域の高齢者が活躍できる場を提供するだけはなく、コミュニケーションを介しての健康増進も期待するとともに、コミュニティカフェのガーデン併設効果として交流人口の増加も狙っている。また、市と協働で取り組んでいる最北端のオリーブ栽培にも、地域の高齢者にボランティアとして関わってもらうことにより、住民コミュニティを強化していく。地域住民と一緒につくりあげる新しい街のシンボルに期待している。
認定特定非営利活動法人 市民公益活動パートナーズ
新旧町内会・復興住宅自治会の連携により住民自らが創る、新たなコミュニティ創出モデル事業
認定特定非営利活動法人市民公益活動パートナーズは、東日本大震災で複合災害に見舞われた福島県の福島市を拠点に、避難者同士及び避難先地域住民をつなぐコミュニケーション紙「おたがいさま新聞」の発刊や「ふくしまの恵みPR支援事業」など福島固有の課題に対応してきたことに加え、中間支援組織として地元NPOの組織運営強化などを実践してきた。今回の応募では、同市北沢又地区における、旧来の農家住民とニュータウン住民とが混在する町内会に、新たに加わった避難者の復興住宅自治会が互いの関係性を深め、コミュニティの推進を図るというものである。具体的には、地元小学校や伝統的な季節行事を活用したり、旧来農家の野菜を復興住宅で販売したりするなどの交流マルシェを開催する。さらに地域課題を恒常的に解決するための団体を組織化する勉強会も実施する。新旧住民・避難者という3つの地域性をどう協働に導くか。チャレンジングな企画であり大変興味深い。