第2期第4回新規助成(2019年10月1日〜2020年9月30日)
このたび、「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」第2期第4回助成(助成期間2019年10月~2020年9月)の選考を行い、以下の通り決定しましたので、お知らせします。
採択事業一覧
団体名 | 事業名 | 活動場所 | 助成額(万円) |
---|---|---|---|
特定非営利活動法人 桜ライン311 | 中間就労者の就労支援による桜守制度の導入事業 | 岩手県陸前高田市内 | 402 |
特定非営利活動法人 フードバンク岩手 | フードバンク子ども応援プロジェクト | 岩手県陸前高田市・大船渡市 | 490 |
特定非営利活動法人 中之作プロジェクト | 海辺の町の風景とコミュニティを次世代につなぐプロジェクト | 福島県いわき市中之作・折戸地区 同市江名地区、永崎地区など沿岸地域 | 480 |
一般社団法人 日本カーシェアリング協会 | 支え合いカーシェアのコーディネーターを地域の中に育成する事業 | 宮城県石巻市内全域 | 435 |
概要
助成の趣旨
東日本大震災から8年が経過した被災地では、仮設住宅から復興公営住宅への移転に伴い社会的課題が顕在化するなど、復興にはまだまだ支援が必要な状況が続いています。一方で、外部支援者の撤退が増加するなど支援のための資源が減少しており、現地のNPOと住民の役割にますます期待がよせられています。
そこで「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」第2期の助成事業では、被災3県に本部を置くNPOが、1. 現地で様々な強みを持って活動している支援の担い手の力を結集して被災地の課題に取り組む事業と、2. 住民の主体的な参加を通じて現在の被災地の課題に取り組む事業を助成します。
助成金額と助成期間
助成1件につき300万円〜500万円(総額2,000万円を予定)
2019年10月1日から2020年9月30日までの1年間
助成対象となる活動
岩手県、宮城県、福島県の東日本大震災の被災地において、「いのち」と「くらし」の再生(下欄参照)に関わる支援活動のうち、特に以下の方法をもって取り組む事業を助成対象とします。
A. 連携・協働
自治会などの地縁組織、社会福祉協議会、企業、行政、他のNPOなど複数の支援の担い手と連携・協働し、被災地域の課題に取り組む活動。各団体が持つ強み、専門性を結集することで、ひとつの団体だけでは解決できない課題に取り組んだり、活動の成果が広域に波及することを目指す事業。
B. 住民のエンパワメント
社会的な孤立、生活困窮など、震災から6年を経て顕在化してきた被災地域の課題に住民の主体的な参加を通じて取り組む活動。NPOなどによるこれまでの活動の経験を生かし、住民自らが被災地域の課題を解決していくことを目指す事業。
- 「いのち」の再生:
- 社会的に弱い立場にある被災者(子ども、高齢者、病人、障害者、災害遺児・遺族、生活困窮者等)が尊厳をもって生きていけるよう、その人権を尊重し、日常生活を支援し、保健・医療・福祉の充実を図る活動。
- 「くらし」の再生:
- 被災した人々が生きがいのある暮らしを回復できるよう、生活の場・仕事の場を再建し、生活基盤を整備する活動。
応募期間
2019年6月10日(月)〜6月21日(金)
応募の傾向
応募総数は34件で、団体所在地の地域分布としては、岩手県7件(21%)、宮城県17件(50%)、福島県10件(29%)となった。応募総額は1億3,515万円、平均応募額は396万円であった。
「A. 連携・協働」「B. 住民のエンパワメント」のテーマ別では、Aが12件(35%)、Bが22件(65%)とBがAの1.8倍の応募数となり、昨年度と同様の傾向であった。
法人の傾向としては、NPO法人が20件(59%)と最も多く、それについで任意団体7件(21%)、一般社団法人7件(21%)となる。設立時期では、2011年3月以後に設立された団体が29件(85%)を占めた。
カテゴリー別応募状況
県・市町村別に見た応募状況
県名 | 市町村 | 件数 |
---|---|---|
岩手県(7件) | 盛岡市 | 3 |
宮古市 | 1 | |
陸前高田市 | 2 | |
釜石市 | 1 | |
宮城県(17件) | 仙台市 | 2 |
石巻市 | 5 | |
気仙沼市 | 1 | |
大崎市 | 1 | |
塩釜市 | 2 | |
登米市 | 1 | |
名取市 | 1 | |
東松島市 | 1 | |
亘理町 | 2 | |
丸森町 | 1 | |
福島県(10件) | 福島市 | 6 |
南相馬市 | 2 | |
いわき市 | 2 | |
二本松市 | 1 | |
伊達市 | 1 | |
楢葉町 | 1 |
法人格から見た状況
法人格 | 件数 |
---|---|
特定非営利活動法人 | 20 |
任意団体 | 7 |
一般社団法人 | 7 |
その他法人 | 0 |
第2期第4回助成の選考を終えて
選考委員長 大島 誠
東日本大震災から8年半の時が過ぎ、メディア露出も減り確実に風化しているといえるのではないでしょうか。被災3県の復興は、見た目では防潮堤が整備され、復興公営住宅などの整備も進んでいますが、2020年度末で閉庁予定の復興庁も継続することが政府から発表され、政府も復興はまだ途上という認識にあると感じています。
震災から時間が経つにつれて、または復興活動の過程で明らかになった課題への対応は、まだまだ続いていますが、NPOの活動を支える寄付も大きく減っているため活動継続が厳しくなっている団体も出てきました。
その影響かわかりませんが、「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」助成事業への応募も年々減少し、第2期第4回の選考には34件でした。応募傾向は宮城県の団体及び住民のエンパワメント事業への応募が多い傾向にあります。
今回も申請団体から取組んでいる課題の存在とその活動の重要性についても学ばせていただきました。特に地域と向き合い、その課題解決のために他組織と一緒に活動をしたり、他地域での活動展開を視野にいれたうえでの地域力を強める活動などが目立ちました。また、申請書ではうまく表現ができているが、実際にヒアリングをすると文章から想像していたのと違っていたこともあり、選考は非常に苦労しました。もっとたくさんの団体へ支援をしたかったのですが、予算には限りがあり総ての団体への支援は叶わず、最終的には4団体を採択し、助成額は1,807万円となりました。採択された団体には、是非とも長期的な視点で活動を続けて頂き、被災地域の「いのちとくらしの再生」にご尽力いただきたいと思うとともに東日本大震災被災地の復興に寄与することを心より期待します。
A. 連携・協働
特定非営利活動法人 桜ライン311
中間的就労者の就労支援による桜守制度の導入事業
桜ライン311は、岩手県陸前高田市内の津波最高到達点に桜を数珠つなぎに植樹することで、東日本大震災の津波の教訓を後世に受け継ぐため、植樹地の取得交渉、植樹、樹木のメンテナンス等を行ってきた。今回の応募は、陸前高田ユニバーサル就労センターと連携することで、働きづらさを抱える人々に中間的就労の場を提供しようというものである。自らの本来事業に就労支援を組み込むことで、地域と共有できる新たな価値が生まれる。事業の継続性を担保しつつ、地域の中で多様な中間的就労の場をつくっていく上でも役割を果たすことを期待したい。
特定非営利活動法人 フードバンク岩手
フードバンク子ども応援プロジェクト
フードバンク岩手は、東日本大震災で被災した岩手県沿岸部や内陸避難者の生活困窮世帯に、これまで約14トンもの食糧支援を実施してきた実績を持つ。今回の事業では、陸前高田市および大船渡市において、小中学生のいる世帯で生活困窮しながらも、SOSを出せないでいる世帯やこのまま放置できない世帯に対して、市および民生児童委員を通じて支援の申し込みを自ら行ってもらい、その当事者に必要な食糧を届けるというものである。さらに学校とも情報共有し、必要に応じて訪問も行い、寄り添った支援につなげたいとしている。震災からの年月の経過により、被災者個々の復興の度合いに差が生じる、いわゆる「復興格差」という現状を危惧する声が聞かれる中、特に子どもを貧困から守るという喫緊な課題に取り組むことは大変意義深い。また、フードドライブによる市民参加を推進し、社会全体で応援するしくみづくりにも挑戦するとしたことも、大いに期待している。
特定非営利活動法人 中之作プロジェクト
海辺の町の風景とコミュニティを次世代につなぐプロジェクト
中之作プロジェクトは、東日本大震災後、福島県いわき市の中之作地区で古民家や空き家を再生し、町並みを保存する事業を通して、地域の活性化を進めてきた。今回の事業では、震災前からの課題でもある人口減少をくい止めるため、様々な団体と連携しながら保存された景観を受け継ぐ若い世代の参加増とエンパワメントに取り組む。具体的には、古民家での若者向けのDIYや海辺の暮らしを体験するワークショップの開催、空き家を活用したふるさと回帰希望者との移住マッチングなどを行い、若者の人口や交流機会の増加を目指す。一方で、空き家問題について考えるセミナーやまちあるきイベントなど、地域住民との交流活動も行い、中之作・折戸地区の地域全体の活性化を図る。人口減が進む被災地の新しいライフスタイルの提案として、他地域の取り組みにも一石と投じる存在となることを期待したい。
B. 住民のエンパワメント
一般社団法人 日本カーシェアリング協会
支え合いカーシェアのコーディネーターを地域の中に育成する事業
日本カーシェアリング協会は、震災後の石巻市で「コミュニティで運営するカーシェアリングという今までになかった『地域の支え合い活動』のモデル」を団体のミッションに掲げ、現在、約300名の会員を対象に活動を続けている。
本事業では、約300名の会員の中から「地域サポーター」を育成し、各地域の活動の自立化を促すことにより、地域コミュニティの活性化を図ること、また、日本カーシェアリング協会が他地域での活動をサポートできるよう、組織基盤の強化を行うことを目的としている。加えて、石巻をモデルに他地域でも地域人材育成ができるようなマテリアルも作成する。まさに住民同士で支え合う住民のエンパワメントのテーマにふさわしい事業である。
復興支援を通じたカーシェアリングが、確実に地域づくりにつながっていくモデルとなるよう期待する。