第2期第5回継続助成(2020年10月1日〜2021年9月30日)
第2期継続助成も最後となる5回目となり、応募資格がある7団体中6団体から応募がありました。審査の結果、第2期助成テーマ別では、「連携・協働」5団体、「住民のエンパワメント」1団体が最終年度事業を展開していきます。
採択事業一覧
団体名 | 事業名 | 活動場所 | 助成額(万円) |
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認定特定非営利活動法人 桜ライン311 | 就労支援を通した桜守事業の展開 | 岩手県陸前高田市内 | 391 |
特定非営利活動法人 フードバンク岩手 | フードバンク子ども応援プロジェクト | 岩手県陸前高田市・大船渡市 | 400 |
特定非営利活動法人 中之作プロジェクト | 海辺の町の風景とコミュニティを次世代につなぐプロジェクト2020~2021 | 福島県いわき市中之作・折戸地区 | 400 |
特定非営利活動法人 りくカフェ | 「はまって、かだって、生涯現役」を支える協働の知恵と力 | 岩手県陸前高田市及び近隣市町村 | 330 |
認定特定非営利活動法人 心の架け橋いわて | 被災地コミュニティにおける支援団体間の連携・協働によるメンタルヘルスケアの強化 | 岩手県大槌町および周辺地域 | 367 |
一般社団法人 日本カーシェアリング協会 | 支え合いカーシェアの「リーダー育成」と「IT化」と「担い手の確保」と「財源確保」を行い『持続可能な体制』を実現する事業 | 宮城県石巻市内全域 | 361 |
概要
第2期第5回継続助成の選考を終えて
選考委員長 大島 誠
タケダ・いのちとくらし再生プログラム助成事業は、第1期2011年から延べ109団体(実数85団体)に約5.9億円を助成してきました。今期5回目の継続助成選考が本プログラムの最終助成となり、継続助成対象7団体中6団体から応募がありました。
応募団体は、1年間もしくは2年間の事業成果・課題・応募事業概要を踏まえたプレゼンテーションをオンラインで行い、選考委員からは、前年度の成果と課題をしっかり認識したうえでの計画であるのか? その事業に実効性及び今後の発展性があるのか?などの厳しい質問が投げかけられました。一方で、より事業成果があがるようなアドバイスもたくさんあり、選考時間がオーバーすることもありました。
各団体のプレゼンテーション及び質疑応答終了後、選考委員により4つの評価基準(実績、発展・展開性、実現性、予算の妥当性)および「A. 連携・協働」のテーマに応募された事業については、連携・協働の観点を加えた5つの評価基準で審議しました。加えて、継続助成をすることで、今後事業を発展させ地域の復興につながるか、助成終了後も持続的な活動につながる計画になっているかなども含め総合的な評価を行いました。なかには新型コロナウイルス感染拡大の影響をうけ、試行錯誤と紆余曲折をしながらも、十分な成果がみえない団体もありました。最終的には新型コロナウイルスの影響も踏まえ、AfterコロナではなくWithコロナの新しい生活様式にあわせた事業の修正などをお願いした団体もありましたが、応募のあった6団体全てを採択し、助成総額は2,249万円となりました。継続助成採択された団体には、Withコロナのなかで更なる工夫を凝らしていただき、支援の実績を残していただきたいと思います。
最後に、本プログラムは、「いのち」と「くらし」の再生を願い、社会的に弱い立場にある被災者が尊厳をもって生活できるような取り組みになることを願っています。また、第2期では、被災地外からの支援が減るなか、地域における復興の先を見据えた「連携・協働」や「住民のエンパワメント」の推進をサポートしています。単に資金助成を行うだけでなく、事業実施団体への伴走支援を丁寧に行い、引き続き東北3県の被災地復興のために活動を続ける現地NPOと共に歩んでいきたいと思っています。
A. 連携・協働
認定特定非営利活動法人 桜ライン311
就労支援を通した桜守事業の展開
桜ライン311は、東日本大震災の教訓を後世に受け継ぐため、岩手県陸前高田市の津波到達点に桜を数珠つなぎに植樹し(桜ライン)、災禍を繰り返さない社会を作ることを目的としている。今回の応募は、その桜ラインの維持管理にあたる桜守業務を同市ユニバーサル就労支援センターと連携し、働きづらさを抱えている方々に就労のきっかけを提供し、雇用するというものである。さらにスタッフが伴奏支援士講座を受講して専門知識を習得し、また、こうした取り組みを広く広報し、寄附による財源確保をめざすというものである。これまで1705本の植樹がなされ、桜を枯らせない日々の管理は必要不可欠であると同時に、最終的には17,000本をめざすとされている中、特に震災10年以降の財源確保は大きな課題である。これまでも全国各地からの応援を受けていると思うが、さらに多様な各層にどれだけその願いが届くか、その展開を注目しています。
特定非営利活動法人 フードバンク岩手
フードバンク子ども応援プロジェクト
フードバンク岩手は、東日本大震災で被災した岩手県沿岸部や内陸避難者の生活困窮世帯に、これまで約14トンもの食糧支援を実施してきた実績を持つ。今回の事業対象地は陸前高田市および大船渡市。小中学生のいる家庭、とりわけ生活困窮しながらSOSを出せないでいる世帯をサポートする。市および民生児童委員を通じて食糧支援の申し込みを自ら行ってもらい、これを契機に食以外の支援ニーズがあれば社会福祉資源につなぐ。早期介入が困窮の深刻化や複雑化の防止につながる。配布する食糧はフードドライブを導入し、市民による参加を推進。すでに両市で70世帯を超える困窮世帯に食糧を届け、社会福祉につなぎながら寄り添う支援を始めており、手応えを感じている。
2年目は、新型コロナウィルスの影響でニーズが広がることが見込まれる。しばらくは感染対策を講じながら、いかに困窮家庭にリーチできるかが課題である。感染の不安でフードドライブにも影響が及んでいる。市民参加を進めるために、これまで以上に訴求力の高い発信、また今後の事業持続に必要なファンドレイジングの企画と基盤強化にも期待したい。
特定非営利活動法人 中之作プロジェクト
海辺の町の風景とコミュニティを次世代につなぐプロジェクト2020~2021
中之作プロジェクトは、東日本大震災後、福島県いわき市の中之作地区で古民家や空き家を再生し、町並みを保存する事業を通して、地域の活性化を進めてきた。今回の事業では、震災前からの課題でもある人口減少をくい止めるため、様々な団体と連携しながら空き家を活用した参加型DIYや交流人口の増加に取り組む。具体的には、古民家での若者向けのDIYや、海辺の暮らしを体験するワークショップの開催、空き家を活用したふるさと回帰希望者との移住マッチングなどを行い、若者の人口や交流機会の増加を目指す。
さらに地域医療従事者などと連携し、この町で生まれ育った住民が「健康かつ幸せに暮らしていくまちづくり」にも挑戦する。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、地方移住は追い風感があるので、若者らしさを活かすと同時に、地元住民の意向を尊重した地域づくりのモデルケースになることを期待したい。
特定非営利活動法人 りくカフェ
はまって、かだって、生涯現役
りくカフェは、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市で、住民主導によるコミュニティスペースの運営等を通じて、被災により分断・喪失したコミュニティの再生・創造を推進し、復興まちづくりに寄与することを目的として活動している。昨年度までは、地元高校と連携した食育事業や社協と連携した介護予防事業、バスツアーなどのコミュニティ支援事業を実践し、好評を得ていた。しかし昨年度末からは、新型コロナウイルス感染症により大半の事業が中止に追い込まれた。今回の応募は、コロナ禍でも可能な活動として、食育事業ではテイクアウトの試みやレシピの配布、介護予防事業では講座や通信の冊子制作や動画配信、コミュニティ支援事業は三蜜を避けながら地域住民の声の聴取やオンラインミーティングの開催など、つながりを絶やさない様々な活動を行おうとするものである。コロナ禍においても創意工夫に富んだチャレンジとして、大いに期待している。
認定特定非営利活動法人 心の架け橋いわて
被災地コミュニティにおける支援団体間の連携・協働によるメンタルヘルスケアの強化
心の架け橋いわては、震災で壊滅的な被害を受けた岩手県大槌町等でメンタルヘルスケア支援を行ってきた。国内外の専門家で構成されたネットワークを持つ本団体は、医療資源に課題を抱える地域のメンタルヘルスケア基盤形成に強みを持っている。一方で、現在でも地域外からの支援者が介入する状態が継続している点に課題もある。とりわけ近年は複数の地域団体と地域特性に配慮したメンタルヘルス支援モデルの構築を目指しているが、結果が出ていない。
助成最終年の本年は、これまで形成した地域基盤とデジタル技術を活かした支援体制の構築に取り組む。特徴として、高齢の地域住民と外部支援者がオンラインでつながるための媒介役として首都圏の大学生を起用する。審査では、メンタルヘルス支援が地域に受け入れられるのか・持続するのか、地域住民にどんなインパクトをもたらすのかが最大の焦点だった。助成継続を決定した理由は成功した際のブレイクスルーの大きさと期待である。被災地の高齢化は進んでおり、新型コロナウィルスの影響も大きい中、成功の鍵は心身の健康に必要なことを共有し合える「変革」にあり、実現のために相応の覚悟で粘り強く取り組むことを期待する。
団体概要・事業詳細:認定特定非営利活動法人 心の架け橋いわて
B. 住民のエンパワメント
一般社団法人 日本カーシェアリング協会
支え合いカーシェアの「リーダー育成」と「IT化」と「担い手の確保」と「財源確保」を行い『持続可能な体制』を実現する事業
日本カーシェアリング協会は、震災後の石巻市で「コミュニティで運営するカーシェアリングという『地域の支え合い活動』のモデル」を団体のミッションに掲げ、現在、約400名の会員を対象に活動を続けている。本事業では、「地域サポーター」の育成や会員へのIT研修を通じた運営しやすい体制づくり、財源確保を支援することによって、石巻の10地域のカーシェア会を自立的かつ持続可能な体制にすることを目的としている。移動支援は、過疎化・高齢化の進む日本各地において全国的な課題となっている。同協会は、地域サポーターを中心に住会員同士が役割分担しながら運営するしくみを、活動の障壁となりうることを想定しながら構築されてきた。他地域が、それぞれの事情に応じて活用できるモデルや知見が提示できるようになることを期待したい。